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after story
携帯を預けると修理の間は代替えのものを準備された…途中まで投稿していたSNSには、いくつか連絡が来ていたが…とりあえず無事であることを投稿でもするか。
なんて思っていると、
不意にカチコチと音のしていた時計がボーンボーンと深い鐘の音と共にメロディを刻む。
アンティーク時計なのか、
オルゴールの音は眠気を誘った。
白い綺麗なベッドで横たわり、
天井を眺める。
ブラウン調の部屋はどこか懐かしさのあるような、
暖かさがあった…
医師の家系とあり広い家だな…
俺は、春輝と共にゆかりの家に来て、
あちこち診察された…
診察が終わり次は手当てをするらしく、
俺はベッドに横たわり2人を待っている。
ガチャ
と部屋の扉が開き、
春輝がこちらへ歩いてくるのが見える。
「調子どーお?」
隣にあった丸椅子に腰掛ける春輝の姿も怪我をしていて痛々しく見えた。
「…まぁ、それなりには」
さっきよりは痛み止めを注射されたからだろう…体はそこまで痛くはなかった。
何となく怠いという感じだけは抜けないが。
ふと気になる事があるので質問してみることにした。
「その話し方さ…河原でヤッた時と違うのは…どっちが春輝なんだ?」
それを言われ、ニヤッと笑う春輝。
何を考えてるのか…
飴を食べ暫く黙っていたが、徐に、
「どっちが好きぃー?」
と質問を質問で返されてしまった。
まぁいい、
「俺は…さっきの…河原時のが良かったと思う、いつも学校だと胡散臭く感じてたしな」
それを聞いて、春輝は「ふーん」と悩んで、
「無理だね」と一言だけ言った。
その否定は、あぁいった話し方を普段からするのは無理ということだろうか。
「俺の前だけでも無理なの?」
「無理♡」
面白いじゃねぇかって心の中で思わず言ってしまうと、ニヤけ顔が止まらない。
だったら、いつか必ずその気持ち悪い仮面を剥がしてやる…
「絶対、喋らせる」
俺がそういうと一瞬春輝は冷たい目で俺を見ていたが「あ!」と声を出してポケットを探る。
一体何をしてるのかと思えば絆創膏を出してきた…
それも普段よく使う、
あのサイズの絆創膏だ。
「俺も治療してあげるね〜」
と楽しげに俺の頬の傷に貼り付ける…
サイズが傷よりも小さい挙句、
まだ洗い流しただけで薬などを塗るのは今からという状況でかなり無意味な行動だった。
嫌がらせなのだろう。
ガタガタと台車の音が近づいてくると、
白衣を着たゆかりが現れる。
「なんですかそれは…」
と呆れた眼で絆創膏を見つめる。
「俺が治療したの〜」
と春輝が言う。
ゆかりが剥がそうとしたが、
俺が手で阻止する。
「いいよ、これでも」と笑いながら言う。
「めっちゃ優しいじゃーん」と言う春樹の顔にも仕返しに近くにあった絆創膏を貼る。
2人でバカやってると、ゆかりがため息をつきながら俺や春輝の行動を無視して手際良く手当てをしてくれた。
「一応確認しましたが、骨に異常は無いと思います…でも暫くは喧嘩はやめた方が良いでしょう…とくに、足を使う運動もあまりよくないので2週間くらいはなるべく安静に」
それを聞いてほっとした。
みんなから変に勘ぐられても困るしな。
といっても連絡は取れなかったし、
ある程度は聞かれるだろう…
急に春輝が俺が聞いていたのを遮って「腹減ったー」なんて言ってくる。
それを聞くと俺も腹が減ってきたので
帰り道は春輝のバイクに乗りラーメン屋に寄ってから帰宅についた。
大切な人たちも顔が見れて、
怒られるかと思ったけど、
取り敢えず、また明日か…
ラーメン屋で
普通の友達のようなたわいも無い会話をして、さっきまでの乱闘が嘘のようだった。
春輝って本当に不思議なヤツ…
久しぶりに騒いだ血、
ふと
寝る前に思い返す、
学校にまたひとつ俺の目的が出来た。
それは蛇のように
今か今かと息を潜めて、
ゆっくりと地を這いながら、
その時を待つ。
…春輝と拳を交える日まで、
俺は、今よりも絶対強くなる …
END
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