"この日"にあなたを選んだ理由

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"この日"にあなたを選んだ理由

6月14日、23時。 今日は奈実の23歳の誕生日。 日曜日で、1日彼氏と濃厚な時間を楽しみ、誕生祝いにプレゼントも貰って大満足だ。 奈実は、大学入学時に田舎から上京して以来、ずっと一人暮らし。明日から一週間が始まるので、今日はもう酒も呑んだし、寝よう。 「あー、悠斗(はると)くんとのデート楽しかった!貰ったネックレス大切にしなきゃ。ふぁぁ、ねむ…ん?」 部屋の明かりを消そうとした奈実は、背後に何か気配を感じた。振り向いても誰もいない。だがいやに奇妙だ。 「…何?気のせいかな…?」 疲れてるんだと自分に言い聞かせ、前を向き直すと後ろで(ささや)くような声がした。 「奈実。久しぶりね」 「誰!?」 声に驚きもう一度後ろを向くと、なんと女の幽霊が立っていた。 「あなたは…もしかして、夏月(なつき)…!?」 変わり果てた姿だったが、奈実にはその顔にはっきりと覚えがあった。 塩谷(しおや)夏月。 高校1年生の時のクラスメート。 ただ彼女は、入学後わりとすぐに転校してしまったはず。確か、6月頃だったような…。 いやそれより、なぜ彼女がこんな姿で自分の部屋に? 奈実には理解不能だった。 「夏月、どうしたの?怖いよ…。嫌がらせ?なんであたしの家知ってるの…?」 すると夏月は、不敵な笑みを浮かべてこう言った。 「奈実、驚かせてしまったわね。ごめんなさい。でもあなたは今日、私に償うべきなのよ。命をもってね…(笑)」 夏月の幽霊は、ビクビクと(おび)える奈実の顔にピタッと張り付くほど近づいてきた。 「つ、償うってどういうことよ…?」 奈実の目からは恐怖のあまり、涙が(こぼ)れた。 「フフフ、忘れたのかしら?あなたが私に"したこと"…。いいわ、教えてあげる。あなた7年前の2013年、高校1年生の頃、私と同級生だったの覚えてるわよね?」 「ええ、もちろん」
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