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由梨絵の結婚式当日。
私はプランニングの担当として、あちこち走り回っていた。
「それは、こちらにお願いします。あ、その鉢植え、もう少し右に動かしてもらっていいですか?」
「遠野さん、新婦さんの着付け終わりました」
「そう。じゃあ、そろそろ、参列者のみなさんに式場に入っていただきましょうか」
「はい」
私はそう指示を出すと、今日の撮影担当のカメラマン、新川さんの元へと歩み寄った。
「新川さん、今日はよろしくお願いします」
「もちろん。あ、そうだ。さっき聞いたんだけど、今日の新婦さん、君の友人なんだって?」
「はい。大学の」
「そう」
「着替えの前に少し話したんですけど、なんだか、今日は一段と輝いて見えました」
「へえ」
「学生の頃からキレイだったけど、やっぱり、結婚式となると特別なんでしょうかね?」
「どうかな? 写真を撮る側の意見としたら、結婚式だけじゃなく、嬉しい瞬間はみんな輝いて見えるけどね」
「そういうものなんですか?」
「まあ、これは俺個人の意見だけど」
みんな、嬉しい瞬間は輝いている──か。
「そういう見方をすれば、今日の遠野さんも輝いて見えるけどね」
「えっ? 私ですか?」
「うん。友人の結婚式を担当する事が出来て、よほど嬉しいんだろうなって」
「か、顔に出てますか!?」
私は手で顔を押さえた。
もしかしたら、顔がニヤケたりしていたのだろうか?
だが、新川さんはクスクス笑うと言った。
「そういう意味で言ったんじゃないんだけど……。あ、そうだ。遠野さん、最近何かあった?」
「何か?」
「最近キレイになったなあと思ってたんだ。だから、何かあったのかと思ったんだけど……。俺の思い過ごしかな?」
「え……?」
少し照れたように、私を見る新川さん。
まさか、本当に、こんなことがあるのだろうか?
あの化粧水。魔法の化粧水……だったりして?
「遠野さん! 参列者のみなさん、会場に入られます!」
「あ……、い、今行きます!」
私はおかしな考えを振り払い、会場の入り口へと走っていった。
ハッピーウェディング、由梨絵!
いつか私も、輝ける日を夢見て──
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