2人が本棚に入れています
本棚に追加
雨の国と日の国
昔々、あるところに雨の国と日の国という、二つの国がありました。
雨の国はやまない雨がずっと降り続ける国で、お日様が照らないので作物を育てることに苦労し、洪水にいつも悩まされておりました。
一方、日の国はその逆です。いつもさんさんと日がてり続けるために、常に水不足に陥っておりました。やはり作物が育てないため、人々は飢えと乾き、砂漠に変わる大地に苦しんでいたのです。
ある時、一人の魔女が言いました。
「雨の国で日が照らないのは、日の国が雨の国の分までお日様を奪っているからだわ」
「日の国で雨が降らないのは、雨の国が日の国の分まで雨を奪っているからだわ」
それを聞いた、両方の国の王様は激怒。
二つの国は、雨と太陽を奪い合って戦争になってしまいました。
相手の土地を自分達のものにすることができれば、水不足も日照不足もなくなるはず。国のみんなが幸せに暮らせるはずだと考えたのです。
彼らが考えた“みんなの幸せ”に、相手の国の人々のことは入っていなかったのです。
どちらの国の人々も、相手の国の人々は自分達から雨や日を奪う“悪魔”だと魔女から聞かされていたからでした。誰も、魔女の本当の正体を調べることも、相手の国が本当に雨や日を奪っているのかも、きちんと確認しようとはしなかったのです。
戦争は酷いものとなり、どちらの国もほとんどの人々が死んでしまいました。荒れ果ててしまった土地を引き取り、二つの国を吸収したのは三つ目の国、曇の国です。
曇の国の王様が話を聴くと、生き残った人々は口々に言いました。
「だって、日の国の奴らがいけないのです。お日様を奪った上、俺達を攻撃してくるから」
「だって、雨の国の奴らがいけないのです。雨を奪った上、私達を攻撃してくるから」
彼らはどちらも、自分達こそが正義だと信じて疑いませんでした。
多くの人々が死んでしまった後でも、相手の国の人々はどれほど傷つけても殺しても構わない、悪魔と信じて疑いませんでした。それを見て、曇りの国の王様は呆れて言います。
「日の国と雨の国で協力して、水や作物を分け合えば。どちらの国も、滅ばないで済んだというのに。愚かな噂を信じて、平気で人を殺せるような奴らなど、最初から滅んでしかるべきであったのだ」
最初のコメントを投稿しよう!