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暁斗と初デートで…
いつもなら、暁斗はポルシェでドライブデートをすることが多いが、綾との初デートは、銀座の3つ星高級レストランでのフレンチをチョイスした。
綾にとっては、こんな高価なところで食事するのも初めてだし、男の人とデートするのも初めてなので、緊張して、コースの手順なども飛んでしまい、どのナイフとフォークを使えば良いか、悩んでいた。しかし、暁斗は、さりげなく綾に、手順を教えて、ワインと美味しい食事と暁斗との会話で、舞い上がっていた。
店を出て、2人で酔い覚ましの散歩をしていると、黒猫が目の前を横切ったのだ。子猫なので、とっても可愛いと思った瞬間。
綾の背筋がゾクっとしたのだ。
そう、この感覚は、出てくる。そばにいる。
見えちゃうパターンだよねって、1人で呟いた。
綾は、霊感やスピリチュアルなことに強いのだった。だから、今日も見えちゃったんだよ。
暁斗の後ろにいたのは、「女の子の地縛霊」
地縛霊は、綾に話を聞いてほしくて、何度も話しかけるが、綾は、「こんな女だと、絶対暁斗が引く」と思って、無視していた。でも…これ以上無視も出来ないと思った時、暁斗が言った。
「あのさ、僕、世の中で一番怖いのが、虫なんだよ。恥ずかしいことに、家では、メイドに虫退治をしてもらうの。こんな僕じゃ、綾の彼氏になる資格はないかな?」
「えっ?人には、怖いものの1つや2つあるんですから、気にしないでくださいね。虫嫌いだからって、彼氏になれないって、誰が決めたの?」
綾は、暁斗を抱きしめて、そんな暁斗を愛おしく思った。で、意を決して、暁斗に自分のことを話し始めた。霊が見えることも。地縛霊がそばにいることも。
暁斗は、びっくりしていたが、地縛霊が綾のことを頼っているなら、相談に乗って、解決してあげようということになったのだ。
綾は、地縛霊のちーちゃんに話を聞いた。
この近くで3年前に亡くなったけど、まだ両親がちーちゃんの死を受け入れられず、毎日悲しんでいるので、なんとかしてほしいというのだ。
暁斗が調べてくれた情報で、ちーちゃんの家もわかった。そして、ちーちゃんの両親に、会いに行くことになった。
ちーちゃんは、まだ6歳で3年前に交通事故で亡くなったのだ。でも、両親が悲しんでいるのを毎日見るのがつらくて、ちーちゃんは、成仏出来なかった。「また、ママが泣いてる。パパも泣いてる。」そんなちーちゃんの思いに、暁斗と綾は、ちーちゃんの両親に、全てを話した。
この家にちーちゃんが来ていて、両親の悲しんでいる姿を見るのが辛い。あっちの世界には、行けない。だから、さまよっているんだと…
ちーちゃんの両親は、納得するしかなかった。ちーちゃんに笑顔で過ごすことを約束した両親は、ちーちゃんの為に、お線香に火をつけた。その時、フーッと両親の耳元で「ありがとう」の声が聞こえた。ちーちゃんが伝えたのだ。そしてあっちの世界へ旅立った。
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