皇居内の制服

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皇居内の制服

勤労奉仕など、イケメン3人は初めてのことだが、綾の頼みならと朝早くから掃除をしていた。4人お揃いのパーカーを着て、昼は、4人でお弁当を食べ、午後も掃除を頑張っていた。そんな日が2日続いた後、3日目の朝、今日は何故か、空気が違う。霊感などないイケメン達にも、その違いがわかった。でも、何故違うのは、わからなかった。 この日は、皇居内の敷地を制服の男性が歩いていたのだ。警察や、自衛隊、警備など、そこにいそうな制服の人は、なんとなく見たことあるが、その男の制服は、今までに見たことのないものだった。 しかも、色白くとても暗い感じがした。 綾は、その男を見た時、ある話を思い出した。何年か前、皇居の警備の警察官になりたかった男がいて、何度も試験に落ちてしまい、自分で独自の制服を着て、自称皇居警備の警察官と名乗っていた。その服装で何度か、勤労奉仕にも参加していたこともあったのだが、とある日、何者かに殺されてしまったのだ。それも、顔も判別出来ないくらい悲惨な状態で。その時着ていたのがこの制服なのだ。犯人は、暴走族あがりの男達で、ストレス発散に殺したと、あの当時は小さな記事で書かれていた。 「その男の皇居への思いが強くて、今は、悪霊として、いろんなところからの霊が憑依して、形としているんだよ。」綾は、イケメン3人に、気にせず掃除をするよう伝えた。 結局、その制服男が見えるのは、ここにいる4人だけ。しかも、除霊や結界を張れるのは、綾だけなのだ。制服男は、綾の存在に気づいて、こっちに向かってきた。綾の手足が氷のように冷たくなって、青紫色に変色していくのがわかった。暁斗は、綾を守るために何か出来ないかと考えた。以前やったお経を唱えることで、少しでも手助けが出来ればと思って、唱えてみた。見かねて、斗真も涼も一緒に唱えた。 多少、制服男の動きが弱くなったが、取り憑いている怨念は、ますます大きくなっていった。綾は、除霊に使っている聖水や怨念を封じる邪魔のようなものを、ぶつぶつ言っていた。綾の周りには、歴代の陰陽師が現れた。 自分でも、何代目の人?って思うくらい、綾を助けにきてくれたのだ。その中にあの「安倍晴明」もいた。歴史の教科書では、見たことあるが、まさかここで会うとは思わなかった。暁斗も斗真も涼も、驚きを隠せずにいたが、今は、この制服男と憑依している怨念達を、なんとかしてくれ!と祈るばかりだった。 歴代陰陽師達が、綾に力を貸してくれたおかげで、制服男も憑依していた怨念も、成仏出来た。結界の張り直しをして、その場の波動調整もした。何もなかったように空気が澄んで、綺麗な夕日が出ていた。綾は、安倍晴明から、現代の陰陽師としての仕事を任され、小さな鈴のようなものを受け取った。なんとも言えないキレイな色だった。
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