決戦の日

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決戦の日

朝起きて、夜中にあったことを頭の中で整理した。歴代の陰陽師にお願いすることも、自宅内にある神棚に祝詞を唱えながら、私達を守ってくれるように、お願いした。しかも、これから行く郊外の住宅地の土地神様にも、力を貸してもらえるように、頼んだ。 全ての準備を済ませて、暁斗の連絡を待った。暁斗は、綾の家まで車で来る予定だったのに、何故か車が動かなかったらしい。前日まで、点検した時は、なんともなかったのに…仕方なく、電車で行くことになった。 「ん?なんかこの状況、見たことあるかも?」満員電車の中で、暁斗が綾を抱きしめていた。 「やっぱり、あれは正夢!この後、あの家で、あの女と会うんだ!」 心の中で綾は、呟いた。 郊外の高級住宅地は、とても環境が良く、鳥のさえずりが聞こえて、時間がゆっくりすぎていくのが、わかった。 暁斗には、夜中のことを話した。 そして、離れないように、駅から赤い糸をお互いの小指に結び、ちゃんと、帰ってこれるように、結界をかけた。 天気も良くて、大きな家の庭には、綺麗な花が咲いている。そんな家が多いのに、あの家だけは、雰囲気が違った。 周りの家は、日差しを浴びてキラキラとしているのに、あの家は、そこだけ別の空間のように、空気が淀んでいて、暗く庭の花も今にも枯れそうになっていた。そんな花の手入れを、あの女性はしていたのだ。 「こんにちは。佳奈さんですか?私、綾と申します。こちらは、暁斗さん。今日は、お時間を作っていただいて、ありがとうございます。少し、お話したいのですが、今、大丈夫ですか?」 綾が、最後の言葉を伝えようとした時、佳奈は、暁斗に気づいた。そして、「なんでここにいるの?私の大事なお兄ちゃん。」佳奈は、暁斗のそばに行って、そう言ったのだ。 暁斗と佳奈は、歳が違いすぎて、何故お兄ちゃんと言ったのか、誰もがわからなかった。でも、佳奈は、それ以外にも、「私の愛する暁斗を返してよ!暁斗は、私だけのものなのだから!」と叫んだり、「暁斗とは、ずーっと一緒に生活していたのに、なんで、離れたのよ。」暁斗に詰め寄る時もあった。それを考えると、たくさんの霊が佳奈の中にいることがわかった。そして、その中の1人があの生き霊だったのだ。 佳奈には、全く自覚がなくて、暁斗のことは、SNSで見て「ステキだなぁ」と思っていたくらいだったが、その日から、毎日携帯がそのページを自然と開くようになったのだ。誰かが勝手に見ているみたいに。
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