ローズムーンの夜に

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ローズムーンの夜に

遅刻寸前で、満員電車に乗り込んだ綾は、いつも通り、緊張して人に触れないように立っていた。まあ、そんなことをしても、次の駅で押されてまた、誰かにぶつかった。 そこには、イケメン3人組の斗真がいた。 「おっ!やっと会えたなぁ。おまえは、俺のそばにいればいいんだよ。離したら許さないぞ!俺の女なんだからな。」 綾の身体を、他の人が触れないように、抱き寄せた。 斗真は、飯塚流の剣士の家系で、何千人ものお弟子さんを持つ師範なのだ。純和風の日本家屋に住み、身長182cm。KI大学の3年生で、水泳部の副部長。成績優秀で、暁斗とは1位を争う仲なのだ。男気溢れる性格で、曲がったことが嫌い。俺様の黒王子。ただ一つの弱点を除いては… 駅に着いた時、斗真ともLINE交換をした。 そして、夕方、また会う約束をした。 綾は、仕事が早く終わったので、約束の場所近くで、コーヒーを飲んでいた。まだ約束の時間には、30分もある。ここを10分前に出れば、ちょうどいい時間に行けると思っていたら、目の前に斗真が、現れた。斗真も早く着いたので、コーヒーでも飲もうと、店に入ってきたのだ。 「偶然だね。飲んだら待ち合わせの場所に行こうとしてたんだよ。」何故か、綾は緊張して早口で話し始めた。 「いいよ。ここでおまえに会えたんだから。でも、心配になるから、早く着いた時は、連絡しろよ!約束だぞ!俺の女なんだから、そのくらい守れよ!」少し照れながら、俺様口調で話した。 斗真がデートに選んだ老舗の高級料亭。ここも3つ星で有名だが、予約も5年先までいっぱいで、普通の人では行けない場所なのだ。 綾は、食事の味より、足が痺れたらどうしようと考えていた。食事のメインが運ばれるころには、綾の足も限界に達した。ジンジンして、立つことも、崩すことも出来ない。恥ずかしくて、斗真に言えない。悩んでいると、綾のそばに斗真が来てくれた。 「足、痺れたんだろう?無理するな。行儀なんか考えなくてもいい。俺の前では、着飾る必要ないからな。俺が決めた女なんだから。今、足の痺れを治してやる。」斗真が綾の足をマッサージしてくれた。とっても、優しいマッサージだった。 マッサージしながら、斗真は、自分の弱点を話した。男気はあるが、猫が嫌い。猫の爪で子供の頃に大怪我をしたらしいのだ。 「猫が嫌いな男なんて、綾は彼氏として、認めてくれないかな?ちょっと心配だよ」あんなに強気だった斗真が、今は無性に可愛く見える。 「猫嫌いだっていいじゃない。誰にでも嫌いなものはあるでしょう。そのくらいで、彼氏じゃなくなるなんて、考えられないよ。」 綾は、斗真を抱きしめた。 食事も終わり、店を出て、近くの公園まで散歩した。空にはローズムーンが綺麗に見えていた。その時、黒い人影が横切った。
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