オモチャは、ほどほどに

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オモチャは、ほどほどに

朝のルーティンをしていて、今日は、余裕があると思っていたら、目覚し時計が、まさかの1時間遅れてることに気づいた。また、慌てて満員電車に乗ることに… もう、こんなことになるなら、会社の近くに引っ越しを考えた方がいいのかな?って、思っていたら、あのイケメン3人組の1人に会った。 「やっと会えましたね。まったく、私のオモチャなんですから、私のそばにいないといけませんよ。お仕置きや調教して、私無しでは、生きられないようにしましょうかね。」 ちょっと不気味な笑みで、涼は、綾を抱き寄せた。「いいですか?離れようとしたら、このオモチャをあなたの大事なところに、押し付けますよ。気持ちよくなっても知りませんよ。」 綾は、涼の言葉に不安を感じて、離れることを諦めた。 駅に着くと、LINE交換して、別れた。別れてすぐに、涼から、「今日の夜、デートしましょう」と誘われたのだ。 涼は、大手IT関連の会社の会長の息子。身体176cm。コンピューターに強く、どちらかと言えば、オタク。KI大学の3年生。成績は、常に3位。そんな涼にも、弱点が1つあった… 涼とのデートは、映画だった。 涼の好きなアニメの劇場版。まぁ、綾も好きだったので、観ていて楽しかった。途中、怖い場面があった時には、涼が手を握ってくれて、少し安心した。 劇場を出てしばらく歩いていると、涼が弱点を聞いてほしいと綾に伝えた。「私は、子供頃から雷が嫌いなんだよ。とっても怖くて。だから、雷の日は、誰かと一緒にいないと、震えが止まらなくなるんだ。こんな私を彼氏と認めてくれる?」恥ずかしそうに涼が聞いた。 「誰でも、怖いものはあるでしょう。雷が怖いからって、彼氏じゃないなんて、思わないですよ。」綾は、涼に抱きついた。 涼も嬉しくなって、綾に持っていたオモチャを押し当てた。ぶるぶる振動が伝わって、身体が変になりそうな時、近くの公園で、ブランコに乗る1人の女性が見えた。 でも、その女性は、生きているのではなく、あちらの世界の人だった。また、何かを綾に伝えたくて、現れたのだ。 涼のオモチャを外してもらうようにお願いしてから、綾の特殊な能力を涼に伝えた。 涼は、興奮して、その女性の相談を解決しましょうと話した。 その女性が言うには、2年前に彼氏と心中をしたのだが、私だけ死んで、彼氏は生きて、女遊びをしていると言う。しかも、亡くなった私のことを、馬鹿にして、周りに言いふらしているのだ。私のために、1度も泣いたり、供養しようともしてくれなかった。だから、許せないと言う。 涼の情報網で、その女性が心中した相手、そしてその女性が、りおと言う名前だとわかった。相手の家まで、10分もかからなかったが、りおは、不安そうな顔をしていた。 「やっぱり、会わない方がいいかな?別の女と住んでいたら、どーしよう。」そんなりおに、「自分の思った通り伝えればいいんだよ。大丈夫だよ。」綾が見かねて言った。 木村の家の前に着いた時、中に居た女性が帰るところだった。しばらくして、木村に事情を説明して、部屋の中へ入れてもらった。 りおは、木村のそばから離れない。事情を理解した木村は、何故、女遊びをするのか話した。「りおが僕にとっては、一番の女だったんだよ。一生一緒にいるつもりだったんだけど…僕だけ生き残って、とっても、辛いんだ。何度も、りおのところへ行こうとしたけど…出来なかった。僕は、りおを悲しませるつもりはなかった。ただ、泣いてる顔は好きじゃないって、言ってたから、なるべく笑顔でいるようにしていたんだ。それに、供養のために、墓参りするのが、まだりおの死を受け入れられないから、出来ないんだよ。今でも、りおを愛しているから。」 木村の言葉を聞いたりおは、大粒の涙を流しながら、木村の耳元で「私も愛してる」と囁いた。突然、部屋の中にまばゆい光が見えて、りおは、あちらの世界へ旅立った。
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