座敷わらし登場

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座敷わらし登場

祖父の家は、3000坪もある広大な土地に、母屋と離れが5つもあり、1つ1つの家に意味があったのだ。しかも、六芒星のように、建っているのだ。2人は、母屋で祖父から、綾の幼い頃の話を聞き、ここでも、「座敷わらし」の話になった。 「綾の産まれるずいぶん前から、この家には座敷わらしが住み着いている。綾のお母さんもワシも子供の頃から、一緒に遊んでいたよ。でもな、最近では、姿を現してくれなくなったんだよ。ワシは、歳を重ねすぎたので、感覚が鈍ってきたなぁ。座敷わらしと話も出来なくなったんじゃよ。おまえ達なら、座敷わらしも会いに来てくれるじゃろ。あの部屋へ行って、一緒に遊んでやってくれないか?」祖父は、涙ながらに話をした。懐かしさと、自分の力が弱まっていることを感じて、やるせない気持ちでいっぱいだった。 綾と暁斗は、母屋の一番奥にある、座敷わらしが住み着いている和室の部屋に入ってみた。その雰囲気は、以前のようなワクワクする感覚ではなく、暗く淀んでいる空気の中に、ロウソクの灯りだけが、揺らめいていた。 綾は、なんとなく感じていた。この部屋に座敷わらしではない、別の存在がいることを… それは、暁斗も感じていた。とっても重く嫌な感じ。暁斗が一歩前に出た時、その存在が現れた。人間の氣を栄養とする怪で、祖父の力がなくなっていたのも、コイツのせいだったのだ。雪女のように、全てを吸い尽くしてしまう訳ではなく、人間が死なない程度に氣を吸って、生きているのだ。 綾は、暁斗を守りながら、どの方法でこの怪を倒せば良いか、考えた。昔、祖父に習った通りに。綾の存在は、怪にとって、邪魔である。だから、綾の力を全て吸い尽くせば、自分も偉大な存在になれると、怪は思った。 怪が綾を襲おうとした時、綾の呪文が眩しい光と共に、怪を飲み込んでいった。そして、怪は、消えていなくなった。綾は、この部屋に結界を貼り、恐ろしい怪が入れないようにした。 ペタペタペタと廊下から子供が歩く音がした。座敷わらしが来てくれたのだ。「さっきの怪は、2度とこの部屋には入れないし、もう出てこないから、安心してね。しーちゃん。」綾は、この座敷わらしが、しーちゃんって名前だったことを思い出した。暁斗は、初めて見る座敷わらしに、驚きを隠さずにいたが、綾と仲良く遊ぶしーちゃんを見て、自分も遊んでみたくなった。3人は、紙風船で楽しく遊んだ。 そして、その夜、優しいキスに始まり、ふたりは結ばれた。甘い甘い夜を過ごした。綾にとっては、28年間守り続けた処◯を捧げた日でもあった。
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