斗真の悩み

1/1
前へ
/48ページ
次へ

斗真の悩み

ある日満員電車で、斗真に会った。でも、いつもより元気がなく、何かを考えているようだった。綾は、駅に着くと斗真の悩みを詳しく聞きたいと、伝えた。 斗真は、飼っている子犬の調子が悪く、病院に連れて行っても、原因不明と言われ、治療の方法がないと言われた。とっても大切に育ててきたのに、何がいけないのか、わからないと泣きそうな顔をしていた。 とりあえず、斗真の家の子犬に会わせてもらうように、約束した。 綾は、医学的に解決出来ないなら、霊的なことがあるかもしれないと、いくつか書物とグッズを持って、斗真の家に行った。 出迎えてくれた斗真の腕には、ミニチュアダックスフントのシェリーがいた。シェリーは、一瞬、今にも綾に噛み付こうとする凄い顔で睨んでいた。 斗真の部屋は、落ち着いた雰囲気で、シンプルで、男の人の部屋って感じがした。初めて、男の人に部屋に2人きりなんて、綾の頭の中は、また、少女マンガ脳になっていた。 綾は、斗真の隣に座り、シェリーの様子を見ていたが、やはり元気がないようだった。時々、咳のよう音を、シェリーのお腹の中から聞こえた。 綾は、以前読んだ書物の中に、体内に宿してしまう怪のことを思い出した。それは、人の体の丹田部分を何故か好む怪で、その部分の奥深くにエネルギーを吸い取り、人を病気にさせて、しまいには、歳を30年老けさせるといたのだ。もし、シェリーが同じ怪の仕業だとしたら、人間の年齢で30年老けるということは、犬の年齢なら、今にも亡くなってしまうじゃないの!と、思ったのだ。一刻も早く、なんとかしなければ… 斗真と綾は、シェリーを寝かしつけて、シェリーの丹田部分にあたるお腹に、綾の浄化なエネルギーを流した。シェリーは、スヤスヤ寝ているが、お腹の部分には、青紫の煙が出ていて、その煙は渦のように回りだした。部屋いっぱいに煙が充満しそうになった時、それは現れた。猿のような姿をしているが、顔は、鬼ように牙とツノがあって、赤い目をしてこちらを睨んでいた。 斗真は、初めてみる光景に驚いた様子だったが、綾がこの怪と戦っているのを見て、自分には力がないと、嘆いていた。しかし、「私を信じて!」と綾が叫んだので、我に返った斗真は、綾を信じて、シェリーが治るのを祈った。その時、何故か般若真如を唱えていた。お経には、魔力を封じる力もあるんだと、綾に聞いていたので、怪の力がみるみる弱まって行って、最終的には、綾の持っていた、封じ込めのビンに怪を入れ、封印をした。 部屋が光でいっぱいになっていた頃、シェリーの寝顔を見ながら、2人は、くちびるを重ねていた。優しい空気の中で…
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加