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都内でも雪が降り始めていた。
12月、残る今年の授業数も両手で数えられるくらいになった。
4人全員が午前中の授業で終わる今日、校舎前学内のベンチで待ち合わせをしている。この後、恒例となったカラオケ店で試験練習をするのだ。歌舞伎町のカラオケ店を使ったのは結局あの泥酔した日だけで、それ以降は大学がある新桜台駅の近くの小さなカラオケ店を使っている。
「夏希は教務課に寄ってるらしい。あと5分で来るって」康介がメールを確認して言った。
「そっか。奏は休みだって。体調悪いらしい」
季節の変わり目だからね…とりんが小さな声で付け足すと、康介は少し考えてから問いかけた。
「奏、体調悪いの?なんて言ってた?」数秒開けてもう一度、「それだけ言ってた?」と尋ねた。
どうしてかとりんが聞くと、「いや何となく。それよりアイツ遅いな」と夏希の話に変わってしまった。
この日は特に肌寒く、りんはブルリと震えてマフラーに顔をうずめた。
「寒いよな」康介は自分が付けていた手袋を外すと、りんに渡した。りんは少し驚いたが、サンキューと言って受け取った。
「ほんと康介って優しいよね」
「は!?そんなことねーよ」康介は耳を赤くして頭を掻いた。
「いや、今までいろんな男の人と出会ったけど、康介ほどやさしい人いないよ。ほんっとにいい彼氏になると思う」
「彼氏?」
「うん。だって…」りんが話そうとした時、ちょうど夏希が小走りでやってきた。
「おまたせ~!あれ今日奏は?」
「休みだってさ」康介が答え、3人はカラオケ店に向かった。
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