美しき演奏者

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美しき演奏者

やはり…予感的中。 青年は、予約室Aのドアの前にいた。先ほどから5分ほど。 入ろうにも入れないのだ。自分は17時からの予約だというのに、ドアの向こうからは紛れもなくヴァイオリンの音色が聞こえる。 勝手に入って演奏しているのだろうか。 いやしかし、どうにも彼は入って注意する気にならず部屋の前のベンチにそっと座って待つことにした。 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番「バラード」…。 実に綺麗な音色だ。 先ほどからすでに15分経過した。ずっと聞いていてもいいのだが、やはり予約したのは自分だ。メールをもう一度確認する。17時から19時と書かれている。現在17時30分。よし、一瞬中の様子をうかがってみよう。 そっとドアに付いた細長い窓からのぞいてみると、それはそれは驚いた光景だった。 夕日に照らされ、こちらからはシルエットしか確認できないが、黒いTシャツにジーパン姿からあふれ出るスタイルの良さ。黒髪か?開いた窓から入ってくる風に揺れている。 美しい……。 青年は初めてドキリと心臓の音を聞いた。
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