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演奏が終わった。
気持ちよかった。
りんはゆっくりと目を開ける。勿論この状態で試験を受けることは出来ないが、練習が始まったばかりの9月にはまずまずの出来だろう。
楽しいので自由曲ばかり練習してしまう。そうだ。まずは課題曲を練習しなければ。
その時、ドアが開く音がした。慌てて振り返る。青年が気まずそうに立っていた。
「あの」
「え。」
「あ~ごめんなさいあの」
「え、なんですか。」戸惑って上ずった声が出てしまった。先にしっかりと言葉を発したのは青年だった。
「あのすいません急に入ってきて。ただ、ここ予約してたの僕なんですよね」
「…え!?うそ」りんが慌てて確認すると、どうやら16時から3時間予約するつもりが、1時間しか出来ていなかった様だ。
「あちゃ~間違えた~~!ごめんなさいすぐ出ていきます!!」
青年がフッと笑った。どうやらりんの「あちゃ~」がツボに入ったらしい。
暫くクスクスと笑っていたが、りんがドアを開けたのを見て慌てて言った。
「あ、あの良かったら一緒に使いますか?おれピアノだし、別物なんでいいですよ。」
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