46人が本棚に入れています
本棚に追加
新しい友達
翌朝、りんが電車に乗ると、いつもの様に端から康介、夏希の順番で座っていた。通勤ラッシュを過ぎた電車はそれほど混んでおらず、3人がいつも座れる様になっている。りんが乗ったのを確認すると、夏希が手を振った。
「おはよう!今日小テストだね」
「勉強した?」
「おれしてねーわ」
他愛もない話をしていると、康介が何やらこそこそと夏希に話しているのが見えた。夏希が「自分で言えよ!」と肘で軽くたたく。それからりんの方に振り返って言った。
「ねぇりん。良かったら3人で課題曲練習しない?カラオケとったんだ、今日の夕方から。」
りんは一瞬考えた。
昨日、神村奏と練習した後のことだ。
ヴァイオリンをしまいながら、りんは出ていこうとする神村を見た。
「あの」
「ん?」神村はきょとんとしている。
「…いつもここでやるんですか?…あの、、練習」
「…うん、明日も同じ時間。暇だったら来ていいよ」
実は今日も神村のところに行こうかと迷っていたのだ。
「今日、ちょっと厳しいんだよね、ごめん」
康介はがっくりと項垂れた。しかし夏希を挟んでおり、りんからは見えていない。
夏希が笑いながら、慰める様に康介の肩を軽く叩いていたことを、りんは気付いていなかった。
そのまま沈黙で電車に揺られていたが、最初に口を開いたのはりんだった。
「ねえいつもいろんなことに誘ってくれるけどさ、今回は2人で練習しなよ。お邪魔したくないし」
「どういう意味?」夏希が目を丸くしてりんを見る。
「だって…、2人だけの世界観あるじゃん。私がお邪魔できない感じの。」
夏希はもう一度まん丸にした目でりんを見て、その後康介の方を見た。暫く揺られていたからか康介は目を閉じている。寝ているのだろう。その様子を見て夏希は少しだけ息を吐いた。
最初のコメントを投稿しよう!