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「ごめんなさい………」
最後までダメな部下で。迷惑かけて。
続く言葉はいくらもあるのに、声が震えて話せない。瞼が熱くなっていく。下を向いているから集まってきた水滴が目からこぼれないように、ぎゅっときつく瞼を閉じた。
下げた頭にポンっと何かが乗せられた。じわりと伝わってきた温もりに、閉じていた瞳から涙が零れ落ちた。
乗せられた手がそのままゆっくりと頭を撫でる。
「よく頑張ったな」
とうとう涙腺が崩壊した。
両手で顔を覆ったまましゃくりあげる。
「っく……さいごまで、ちゃんと…できなくてっ、……た……たくさんのこと……教えてもらったのにっ……」
支離滅裂な言葉をこぼしながら、次々と熱い涙が両手に伝っていく。
すると突然、ふわりと柔らかく包み込まれた。
「大丈夫。ちゃんと最後にはお客さんは笑顔だったろ?一番大事なことはちゃんと出来てたよ。もう一人前だ」
とんとんと、あやすように背中を叩かれる。
少し上から降ってくる声は、いつもと変わらない柔らかなテナーボイスなのに、どこかいつもと違って聞こえる。
上司に抱きしめられているということを理解した途端、驚きで涙が止まった。
ひっく、と嗚咽の残りでしゃくりあげると同時に、背中に回った腕がギュッと強くなった。
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