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魅ざる、着飾る、着飾らない!
噴水にダイブするという、日常生活ではあまりないシチュエーションからうっかりイケメンと付き合う事になってしまったが、部署は違えど同じ会社だから、私は言いふらすつもりなど微塵もなかった。
なのに、月曜日に出社すると、女の子たちが角砂糖に群がるアリのように、わあっと押し寄せてきた。
「センパーイ、聞きましたよお!」
「おめでとうございます、センパイと水島さんなら、すごくお似合いですぅ!」
なっ、なっ、何事!?
私が目を白黒させていると、後輩がつつっと寄ってきた。
「水島さんがね、朝イチで、桜井センパイと付き合ってますって宣言したんです。センパイ、モテるから、心配なんでしょうね」
うふふ、と後輩は笑った。
モテるといっても、それは化けた私がモテるのであって、素っぴんの私は──
「あ、あのね、私ホントは、いろいろ化粧で誤魔化して──」
「えーっ、なに言ってるんですかあ。センパイ、急にキレイになりましたよぉ!」
え、うそ。
……でも、突然ブツッと現れたにっくき吹出物は、この土日でまるで嘘のように消えたのは事実。
「前からキレイにメイクはしてたけどぉ、今は内側から輝いてる感じ? 恋ってホントに女性をキレイにするんですねえ!」
まあ、きっかけは鯉だったけど。噴水の。
でも、後輩にしろ水島さんにしろ、メイクを褒めるんじゃなく、私自身を見てくれてるのって、なんて言うか、胸の辺りがくすぐったい。
くすぐったくて、あったかい。
[おわり]
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