見ざる、聞かざる、化けの皮

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***  噴水に向かって設置されたベンチに二人。  ずぶ濡れの私と、ずぶ濡れの水島さん。そしてずぶ濡れのハナマメ。  なぜ、こうなった?  気だるい土曜の朝、こじゃれた公園の、こじゃれた噴水…… 「ご、ごめんなさい!」  ようやく我に返った私は、勢いよく水島さんに頭を下げた。ハナマメを救う為とはいえ、水島さんまでも噴水に飛び込ませてしまった。 「あの、本当に、すみませんでした! 私がちゃんとリードを持っていれば……」 「無事でよかった。けっこう深いんだね、この池」  ちらりと横目で見れば、水島さんの髪の毛からもポタポタとしずくが垂れている。スポーツウェアだから、乾きはいいだろうが、このドブのようなニオイとか、水浸しになった靴の感触とかあああああっ! 「ごめんなさい……」  もう、ホントに、いくら謝罪の言葉を述べても足りない。思わず目頭が熱くなって──  そしてはっと気付いた。  おそらく。  今。  私の顔は、限りなく素っぴんに近い……。  あああああ、見られた! 一番見られちゃいけない人に、家族にしか晒したことのないこの、吹出物の吹き出た肌を! 「大丈夫? 寒い?」  慌てて俯いた私の肩にそっと掛けてくれたのは、水島さんが飛び込む前に脱いだのであろう、スポーツウェアの上着。 「だっ、大丈夫ですから、見ないでっ」 「え?」 「わ、私、素っぴん──」 「ああ、なんだ、そんなこと」  あはは、とイケメンらしく爽やかに笑う。私のトップシークレットを「そんなこと」呼ばわりされたことで、私の怒りスイッチがぷちっと押された。
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