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カアッと顔から火を噴いたが、イケメン水島はにこにこ笑っているだけだった。
そういえば水島さんもスポーツウェア姿だ。
「あのう……」
「ん?」
「水島さん、スポーツされるんですか?」
「ああ、ジョギングは毎日欠かさないよ。すごくいい気分転換になるんだ」
はあ、そうデスカ……。
………しまった会話が続かない。
と、ふとハナマメがリードをぐいと引っ張った。何事かとハナマメの視線を追うと、噴水の向こうになんとも愛らしいトイプーの姿があった。
これは会話を切り上げるチャンスだ。
「あ、なんか、あっちに行きたいみたいなんで……」
そう言って立ち上がろうとしたその時だった。
私の手からするりとリードが外れ、あろうことかハナマメが、トイプーに向かって一直線に駆けだした。
一直線……そう、ヤツのなかで、噴水の存在は削除されたらしい。短い脚でピャーッと走り、それはそれは見事に噴水へとダイブした。
「はっ、ハナマメッ!」
噴水といっても、大きな鯉が何匹も泳いでいる、結構な深さの噴水だ。当然ハナマメの脚は底につかないし、それになんと言ってもハナマメは泳げない。
バッシャーン!と派手に水しぶきを上げて、ハナマメは落ちた。
「ハナマメーッ!」
必死に手足を動かしているが、犬掻きとは程遠い。どう見ても溺れてる犬にしか見えない。
クソッ!
私は意を決すると、ばしゃんと噴水に飛び込んだ。
私は首まで水に浸かった。足は、どうにか爪先が着く程度。パニクってるハナマメがたてる水しぶきで視界が遮られる。私は必死で腕を伸ばした。
「ハナマメ! ハナマメ、落ち着いて、大丈夫だから!」
暴れるハナマメの胴体をどうにか両手で掴んで、渾身の力でハナマメを頭上に掲げた。なおも両手両足をバタつかせるハナマメから滝のように滴る水で、私は頭からずぶ濡れになった。
「水島さん、ハナマメを!」
ハナマメを持っているため、私はその場から動けず、必死で叫んだ。すぐにばしゃんと大きな水音がして、水島さんまでも噴水に飛び込んで、ハナマメを受け取ってくれた。
***
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