『おばさん』ではなくてよ

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 トリートメントされた髪は念入りにブローされて、ふんわり軽やか。それでいて艶髪はマイナス五歳に私を若返らせる。 「流石、美のマジシャンね。ありがとう」 マダムを気取って、ヒールの靴を高鳴らせて私は店を出た。 (次に生まれ変わるならば、私は女よりも男がいいわ)  誰に口説かれることの無い至って普通の『おばさん』だけど、誰に見られるでも無く綺麗を求めてしまう。綺麗を捨てきれない。  それが女という種族。  男の私はそんな女を口説くでも無く、紳士的にサラリと言って見せるの。 『最近、綺麗になってない?』ってね。 そんな言葉一つで女はマダムにだって、姫にだってなれるのに、まるで知らないみたいなんだもの。
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