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一方、彼の式神の小鬼はというと、恭の膝の上で音楽に合わせてノリノリでヘッドバンギングしている。
「おい、俺の膝の上で踊るな。どけ」
恭がすごむと、小鬼は不服そうに「べっ」と舌を出して後部座席に消えた。
恭はやれやれと窓枠に肘をのせて頬杖をつき、点々と続く街灯に照らされた通りに目を向ける。酔っぱらった大学生らしき集団とすれ違った。新入生歓迎会でも開いていたのだろうか。
「しかし、狐坂とは、また定番の心霊スポットだよね。高架橋の新しい車道ができてから、怪異はかなり減ったはずだけれど」
カーナビの指示に従って右折しながら、与一が不意に思い出したように言った。
「ああ。旧道は現在の歩行者・自転車道の場所にあったんだっけ? ヘアピンカーブで事故が起こることもあったとか」
「そうそう。当時はしょっちゅう狐坂の妖怪祓いの依頼が来てたらしいぜ」
「まあ、この辺りには心霊スポットの深泥池もあるしな。平安京の結界からも外れているし、怪異が集まりやすいんだろう」
「さーてと。着いた。今回はどんな妖怪かね?」
与一は車のスピードを緩めると、路肩に停車させ、窓から顔を出した。彼らの正面には二本の道が見える。左の歩行者・自転車道は林の陰に沈み、右の車道は高架橋へと向かっていた。どちらも人気はない。
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