第9章 犬神の怪 後編

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 一息で言い放った。稲荷狐たちの顔に驚きの色が浮かぶ。恭は少し心が痛むのを感じたが、彼の強固な決意はそんなものでは揺るがなかった。 「そうか……。恭殿がそれを自分の使命だと考えているのなら、それこそが、恭殿の転狐としてのお役目なのじゃろうて……」  祖父は少し寂しそうな笑みをこぼして言った。 「すみません……。でも、みなさんにお会いしたお陰で、私はすごく救われた気がします」  恭は膝に手を当ててゆっくりと立ち上がった。稲荷狐の家族を順番に眺め、二度と会えないであろう彼らの姿を脳裏に焼き付けようとする。 「短い間でしたが、お話しできて嬉しかったです」  軽く一礼した。 「ああ。こちらこそ……」 「元気でね! 健康には気を付けて!」 「頑張れよ!」 「立派な転狐になるんじゃよ!」  皆が口々に声をかけてくれる。すると見る間に辺りが白い霧に覆われ、彼らの姿は霞の向こうに消えていった。 「さよなら……」  感傷に浸って呟く。と、次の瞬間、 「さあ、現世に戻ろう!」  三尾が尻尾を振り、恭の腕に飛びついてきた。 「あれっ? お前はこれからも俺についてくるのか?」  恭は驚いて振り返る。三尾は恭を見上げてフンと鼻を鳴らした。 「当然! 私がいなくなったら、兄様は陰陽師のお仕事ができないでしょ? 今後も呼び出されたら何時でも現世に行くよ! あっちでは狐の姿になっちゃうけどね」
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