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全く。こいつは怒る気にもならない。
与一は当たり前のように冷蔵庫の前にしゃがんで、中をのぞき込む。
「おっ! ちゃんと冷蔵庫の中に食べ物が入ってるじゃん。プリンもらっていい?」
「勝手に開けるなって」
恭は与一の目の前で冷蔵庫を閉めた。
「ははっ。ちょっとはお金に余裕が出てきたみたいだな。犬神の一件から俺たちに舞い込んでくる依頼の数が急増したからね」
与一は満足げに笑いながら立ち上がった。恭はため息をつく。
「その代わり、お前が持ってくるハズレの依頼に付き合わされることも多くなった気がするけどな……。でも、生活費が助かってるのは事実だよ。――で、良い知らせって一体何なんだ?」
「おう。よくぞ聞いてくれました。いいか? 聞いて驚くなよ?」
与一はわざとらしく片目を細め、もったいぶって人差し指を立てて見せた。いちいち鬱陶しい奴だ。
「何だ。早く言えよ」
「なんと、今年の晴明賞…………俺たちが受賞することになりました! いやったー! ばんざーい!」
与一は両手を上げて叫んだ。
「そうか。良かったじゃねえか」
恭は冷めた口調で答えて椅子に腰かける。
「なんだよ。嬉しくないのか?」
与一が不服そうに眉根を寄せたので、恭は肩をすくめて言った。
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