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「ちゃんと喜んでるぜ? でも、犬神を祓った時点で、だいたい受賞する予想はついていたからな。別にそんなに驚かないっていうか……」
「ちぇーっ。つまんねえ奴だなー」
与一は唇を尖らせる。
「そんなんだから、いつまで経っても美鵺子ちゃんと付き合えないんだよ」
「ばっ! 美鵺子のことは今関係ねえだろ!」
「だってさあ、これだけしょっちゅうデートしてるのに付き合ってないって、普通おかしいでしょ」
「だから、あれはデートじゃないって……」
「やれやれ……。こりゃあ、まだまだ先は遠そうだ」
与一は大きく息をつく。恭は渋面を浮かべて椅子から立ち上がり、げんこつで与一の背中をぐりぐりと玄関に向かって押した。
「ほらほら! 冷やかすんなら帰れよ! 俺は忙しいんだ」
「えー? どうせ今日もだらだらしてたんでしょ?」
「うるせえ。未だに卒論が一ミリも進んでない奴と一緒にするな」
「分かった。ストップストップ。これから本題を話すから!」
「今までのは本題じゃなかったのかよ」
恭が呆れたように言ってこぶしを下げると、与一はニヤッと笑って携帯端末を掲げた。
「へへ。実は、俺たちに新しい依頼が入っておりましてね……」
「あっ。しばらく仕事はいいや。帰れ」
「待てって! 話くらい聞いてくれよ」
与一はもう一度恭のこぶしを押さえて食い下がる。
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