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ぐーう。
再び大きな腹の音。
その時、不意に玄関チャイムが高らかに鳴り響き、恭は飛び上がった。しかし、恭ときたら、
「ちぇっ。驚かすな。今は誰とも話したくないよ」
そう小声で呟くと、居留守を決め込むべく、机の上に腕を組んで突っ伏してしまう。
すると、十秒も経たないうちに、今度は彼の携帯端末が着信音を奏でた。恭は面倒くさそうに顔を起こすと、眉まで伸びた黒髪をかきあげ、携帯端末の画面に目を落とす。
連続で着信した短いメッセージが古い順に並んでいる。差出人は全て同じだ。
『おい! 俺だ。開けろ!』
『中にいるんだろ! 式神の妖気を感じるんだよ』
『寝てんのか? 小鬼を中に送り込むぞ!』
『畜生! 小鬼がドアでつっかえてやがる。どんだけ強い結界を張ってんだよ』
「げっ」
恭は顔をひきつらせた。仲が悪くなくても会う時を選びたい友達というのはいるものである。少なくとも、今はこいつと会いたい気分じゃない。
逡巡していると、玄関チャイムの連打が始まった。これには流石の恭もたまらず、玄関に突進して乱暴にドアを開ける。
「うるさい! 近所迷惑だろ!」
「あ、やっぱりいた。ちーっす」
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