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この三尾の狐は恭の式神だった。式神というのは、陰陽師が使役するこの世ならざるものたちのことだ。
「ウーッ!」
耐えかねた三尾の狐がとうとう唸り声を上げた。先ほどまで恭にエアなでなでをしてもらって上機嫌だったはずなのに、よほどこの闖入者が気に食わなかったらしい。折しも小鬼が一匹、興味津々でその尻尾を触りに行こうとしていたのだが、慌てて逃げ出して与一の足の間に避難した。――こちらの小鬼は与一の式神である。
「あー、やっぱり嫌われてるなあ、俺」
与一が肩を落とした。
「そりゃあ、主人以外に簡単に懐かれたら、式神としては役に立たないだろ」
「いいなあ、俺ももっと上位の式神が欲しいよ」
ずいぶんと羨ましそうだ。陰陽師の実力は式神の強さによって決まると言っても過言ではないのである。
恭は椅子に座り、レジ袋からみたらし団子を取り出しながら無関心な口ぶりで答えた。
「式神くらい自分で探せばいいじゃないか。それより後ろ見ろよ。小鬼が怒ってるぜ」
「わあ、ごめんごめん!」
与一は慌てて謝った。小鬼がもともと赤い顔をさらに赤くして与一の足を両手でポコポコと殴りつけていたのだ。
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