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「ほら、これ。『京都陰陽師組合』から久しぶりに依頼が回ってきてたんだよ。報酬が高い仕事だから教えてやろうと思ってさ」
与一が掲げた携帯端末には、一見アルバイトの求人のような文面が表示されている。しかし恭は不服そうに眉根を寄せて、ぷいとそっぽを向いてしまった。
「ちぇっ。一体何を企んでいるのかと思ったら、そんなことかよ。これでもし俺がやる気になったら、一緒について来ようっていう魂胆なんだろ?」
「あはは。一人じゃ心もとなくてね」
与一は悪びれることもなく笑い声を上げる。恭は大きなため息を漏らした。
「俺はやんねーぞ。妖怪祓いは心身に負担がかかりすぎるんだよ。前に怨霊を調伏した時も、その後一週間は寝込むことになったからな。悪いが俺に協力を期待されても――」
「二十万!」
「え?」
恭が耳を疑って振り向くと、与一はにやにやしながら指を二本立てていた。
「ふっふっふ。喰いついたな。一人十万ずつだ。悪くないだろ?」
「は!? い、いや、待て! 何でそんなに報酬がいいんだ? 騙されてるんじゃないのか?」
「大丈夫。これは自治体からの公式な依頼だ。いいから中身を確認してみろって」
恭は鼻先に突き出された携帯端末を受け取り、業務内容の文章を読み上げた。
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