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「『松ヶ崎の狐坂に怪異あり。交通事故を未然に防ぐため、妖怪祓いを要請する』――か。なるほど……」
「さて、どうする? ぐずぐずしてると他の陰陽師に先を越されるぜ?」
「む……う」
恭は口元に手を当てて唸った。
確かにこれはまたとないチャンスだ。次のアルバイトが決まるまでしばらく安定した収入は見込めないが、ここで一稼ぎしておけば当面の生活は心配しなくて済む。妖怪祓いの反動で数日動けなくなっても、それに勝るくらい報酬は魅力的だ。――もっとも、与一にいいように利用されるのは癪だが。
「はあ。分かったよ……。その話、のってやる」
恭はうなだれて力なく言った。
「そうこなくっちゃ! それじゃあ、明日の深夜三時に車で迎えに来るぜ!」
「へいへい」
こうして、今宵、二人の若き陰陽師の即席チームが結成されたのである。
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