全ては貴方の為に…

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「水沢さん、今日夜二人で飲みに行かない?」 仕事が終わり後は帰るだけとなった時、同じ部署の男性の先輩に誘われた。 隣の同僚女子は気を利かせたのか『お先〜』と言って先に帰っていく。 初めて誘われてどうしようとあたふたしちゃったけど、ふと水沢主任の姿が目に移り私は少し冷静さを取り戻す。 「いえ、あの今日はちょっと…」 愛想笑いで断り、男性先輩がいなくなるとデスクに手をついてハァっと息を吐き出した。慣れない出来事には疲れるな。 「何だ、せっかくの誘い断ったのか?」 一息ついている私の後ろから水沢主任の声がする。 「やっぱり見てたんですね」 振り返って水沢主任の姿を確認した。 「俺も七瀬を誘おうと思ってだけど、やめた方が良さそうだな」 「えっ?」 聞き間違い?水沢主任が私を誘おうとするなんて都合の良い話があるわけ… 私は水沢主任を無言でガン見する。でも仕事の時とは違う意地悪そうな笑みは…あ〜もう、本気か冗談か判断つかない。 「どっちですか!?」 「何が?」 「本気ですか?それとも冗談ですか?」 少し切れ気味に水沢主任の顔を覗き込む。肝心の主語が抜けている事には気づかなかった。
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