34人が本棚に入れています
本棚に追加
「水沢主任は彼女いるんですか?」
「彼女がいたら遅くまで会社にいないだろ」
駅に向かって歩く途中、私は水沢主任に質問した。彼女はいないという返事に安堵する自分がいる。
私、どうしちゃったんだろう…何だか水沢主任の事が気になってしょうがない。
そしてあっという間に駅に着いた。私と水沢主任は乗る電車が違うみたいなのでここでお別れだ。
「ではまた明日」
名残惜しいけど、挨拶をして改札口に向かおうと水沢主任に背を向ける。
「七瀬」
水沢主任に呼ばれてクルッと振り向く。するとこっちに来いと言うように手招きをしている。
取り敢えずまた水沢主任の元へ戻ったその時…
私は主任に腕を掴まれてグィっと引き寄せられた。その反動で水沢主任の胸の中に飛び込んでしまう。
『ごめんなさい』と言いながら慌てて離れようとするけど、水沢主任が片腕でそのまま私が離れないように力を入れている。
「しゅ、主任!?」
よく分からないけど嬉しい。でもこのままだと胸のドキドキがバレちゃうよ。
「俺がビビるくらい綺麗になってみせろよ」
水沢主任は抱き締めている私の耳元でそっと囁く。そして私から離れた。
私は呆然としながら水沢主任を見つめていた。
「気をつけて帰れよ。あっそうそう、弁当と一緒に生野菜サラダも食べとけ。じゃあな」
意地悪そうな笑みをすると私に背を向けて帰っていった。
最初のコメントを投稿しよう!