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ACT2
これで家賃三万も取るの?なーんて、浮かれていた。
マジで、中途半端に信じていた。私たちは今何を見ているのだろうという思いがした。
今見て来た部屋、中はどんなふうにしようかと考えていたのが無残にも崩れた。
部屋の前に無造作に置かれた荷物たち。
どういうこと?
女性差別?
女はすぐに結婚して出ていくからという寮長は御年六十歳、家族三人でこの寮を管理している。
文句あるかという低い怖い声にビビる。
外で名前を呼ばれ、渡された紙。
私たちはその部屋に三人ではいるというのだ、これはいくらなんでも、それで三万?出ていけと言っているのも同じだろう。
そこで思った、この会社はブラックだと。
男性に待遇がいいのは、男性は辞めなくても済む可能性があると見た。
とにかく中に入る、どうしようかという三人で自己紹介。
一週間は我慢して他の寮の情報も聞き出そうということになった。
三枚敷いた、布団はぴっちりで、布団の上が自分の陣地。
荷物は、押し入れに入れると何も入る隙間すらない。
冷蔵庫に洗濯機、どうすると顔を突き合わせ、近くのコインランドリーで洗濯。
何も買わないのが得策と、とにかく様子を見ることにしたのだった。
Black企業、やっぱりそうだと思ったのは、営業所でのお茶くみしかない仕事は女子でくくられたからだ。女子の先輩がいるはずもなく、雑用が回ってくる、トイレ掃除から部屋の掃除、事務?まだまだ仕事はさせてもらえないようです。
パートもいない、男性ばかり。それもお客様を引くためにか、結構いい男がカウンター席を埋めた。
ホストかい!
男性先輩、それもいじられキャラのおとなしそうな人に部屋の話を聞いたら、やめていく人ばかりだから最終的には一人部屋になるんだというのですが。
「頭のいい子は一年で出て自立するよ、そんなの子は本社に行って、そのあと地元に戻るけどな」
そうなんだ、でも、なんでやめていくの?
セクハラ、モラハラ、とにかく女性には絶えなきゃやっていけない職場だというのだ。
あきれてものも言えない状態。
そんな会社を教師が進める?そこにも何かがあるのだろうな…。
子供だと思って、なめんなよ!
なぜか闘志がわいてきた。
「えーっと、小笠原君、お茶いれてくれる?」
給湯室のような場所、げ、マジかよ。
コバエが飛び、シンクには汚れのついたもの、わきにはゴミが積んである。
ゴキブリホイホイは踏まれてぺちゃんこ、それでもついてるG軍団にヒェー。
震えが来た。
あったま来た!
大きな声でみんなが注目するように言った。
「ゴミ袋はどこですか!使い方を教えてくれなければお茶の一つも入れられません、雇ったからにはちゃんと教えるのが義務でしょ!」
みんながポカーンとしていた。
腕をまくり上げ、鼻息も荒く、誰かが言い出すのを待った。
「あのー」
「はい!」
気の弱そうな男性がここにあるからと言ってくれた。
「ありがとうございます!」
ゴミ袋を出し、はさみを探す、さびたはさみで切、エプロンにして、準備を始めた。
疲れたー。
布団を三枚並べては、愚痴を言うも、どうする?なんて。探すにしても倍の金額はいる、とにかく一年、お金をためて出ていくしか方法はない、と結論付けた。
一か月は研修期間で、家賃は引き落とされないが、お給料も正規の半分、それは食事に飛んでいく。
親に泣きつく子も出始め、一週間を待たずして脱落者が出始めた。
三か所のマンションはどこも同じで、あいた部屋を貸してほしいと訴えた子には、敷金、前金を出せという。いくらと聞いたら三人分の金額、っていうことは九万円?横暴さ、それを訴える人もいる、人事、総務、いずれも却下、こりゃダメだ。
SNSにあげるも、まだいい方、ビンボーガールを見て工夫しろとのお叱り儲ける始末。
世知辛い世の中だねーという二人。
秋田から来たよっちゃん、山形の、華ちゃん、青森から来た私、美穂。
冷蔵庫も洗濯機も買えないでいた。
疲れて眠るだけで、布団さえ敷きっぱなし。
コインランドリーに行って洗濯。
けちけちでやれるところまでやってみようということになった。
遊び感覚の方がいい。
でもその考えを持っていたのは私たちだけじゃなかった。
みんなが飛び地のように、階も違えば、ばらばらで話もできない。
そんな中、コインランドリーで出会った子はおんなじ階で四つ離れた先にいた女子。その子たちもなんとか快適に過ごそうと相談し始めていたんだそうだ。
「三人で、寝泊まりするだけならいいけど、ご飯を作って、となると、食器やいろんなものを置く場所もないよね」
そんな話をしていたら、せめて食堂みたいな共有できる場所があればいいと思わない?光熱費かかんないんだしさ。
みんなはそれだと指さした。
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