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ACT3
東京は東京だが、父島からやってきた奈々ちゃん、宮崎から来た、しーちゃん、大分から来たミヤちゃんの三人。
丁度私たちの間の部屋が開いたのだ。
そう三人ともやめていったのは、あと一週間で、本雇になろうとしていた時だった。
営業所は案外なれると、さほど悪い環境じゃないかもと思い始めていたのは私だけじゃなさそうで。
笑顔であいさつ、綺麗になったカップにコーヒーを入れ皆さんにふるまう。
「おはようございます、課長、お茶です」
「ああ、おう、ありがとう」
給湯室は私好みに変えていった。
みんながいろんなものを勝手に置くから、皆さんの席に置く場所を作ってあげただけさ。
見る見る間になくなっていくものたち、そうよね、ここは洗面台じゃないんだから。
そしてトイレも、お客様も使いますということで、みんなの物は、掃除用具入れに、そうするとさすがに自分のところにもっていくわよねー。
発掘して出てきた電気ポットにコーヒーメーカー。
お客様用のカップは、使い捨ては今、使わず品のいいカップとソーサー。
お昼にくるお客様に見えないように給湯室で食べていたのを知って、見えないように机の配置換え。
フー、これで良し。
メインのカウンターは動かすことができないから、こっちを替えればいいだけじゃない。
ここなら、カップ麺だろうがコンビニ飯だろうが、人の目なんか気にしなくていいわよね。あちこちから出てくる、ゴミのようなもので目隠し、上等じゃん。
男性たちは来るたびに代わっていくのにあきれていたが、有無を言わせないように鋭い視線を送っていた。
九万円の物件。
なかなかないなー。
埼玉、茨城、群馬、通うだけで大変そう。
通勤費も出さないような会社だし、ここがベストなんだろうなという結論になってしまった。
そして、九万はいたいけど、一人、一万五千円負担ならということで。
私は初めて借金をした、五万円がものすごく重くて。お給料が出たら月五千円返します、利子は会社からなのでかからないことにほっとしました。寮長の奥さんに頼んで、袖の下も渡すことを忘れずに実行。
「では、これが敷金と前金になります」
「じゃあこれが書類ね、出ていく時まで持っていてください」
「ありがとうございます、あのーこれ、少しなんですが皆さまでどうぞ」
「あら―、悪いわね、気を使わせちゃって」
規則や、光熱費なんかは変わることはない、改造も元の部屋に戻してくれるなら文句は言わないそうだ。ムフッ。これでこの部屋は私たちのものだ。
これからもよろしくお願いします、と頭を下げ、ルンルンで戻って来た。
部屋の前で待つ五人。
「これからここは私たちのシェアルームよ!」
中に入り輪になって相談、みんな我慢してきたんだもん。
買うものは冷蔵庫と洗濯機、それと炊飯器、オーブントースターと電子レンジ。
食器棚は、しーちゃんの営業所からもらってくる。
ダイニングテーブルは、よっちゃん。
椅子は買う羽目になるかもな、なんて、今はお金をかけないのに越したことはないのだ。
買い物場所もめどをつけていた、リサイクルショップ!
ここぞとばかり男性を使う。
「せめーいいのか?」
「はい、ここにお願いできますか?」
「よし、外れたぞ」
「ありがとうございます」
押し入れのドアを取ってもらったんです。それと、押し入れ、案外ちゃちい作り、バンバン下からたたき、板を外し、天袋に投げ入れた。最後は元に戻すんだもん、ちゃんとしておかなきゃね。
「こっちもいいぞ、これでどうだ?」
立派なコンロ台ができ、三台のIHコンロを並べておきました。
「上等、上等」
「ねえ来て!」
玄関で作業をしていた男性の側にみんなが集まりました。
「これを引っ張ると、どうだ、ここにも物が置けるぞ」
すごーい、可動式の吊戸棚が出来ました。
そしてこっちでも、テーブルが折り畳みになり使わないときは半分のスペースです。
すごーい、と男性をよいしょです。
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