ACT6

2/3
前へ
/19ページ
次へ
「煮魚は、美穂ちゃんがうまいよね」 「野菜物は華ちゃんだよ、さすが山形人、だし、最高です」 「そう言ってくれるとありがたいです、冬は漬物でもするか?」  そういって手にしたのは、キュウリやナス、これも大量です、傷まないうちに消費しましょう。 「おかえりなさい、どうでした?」 「おいしかったよ、あの量も丁度良かった」 そうですか、よかったです。 今日の魚は何? からすがれいです、それとーじゃん、これ。 「うわ、まじで、ありがと」 「なんの、ジャガイモは庶民の味方ですから」  水谷さんのリクエストで、ジャガイモのフライです。それも甘い味噌たれをかけたものです。  そしてみんながそろいました。 「いっただきまーす」    ピンポーン。  ン?誰?  みんないます。誰だろう?  ドアを開けると、仁王立ちの男性。 「あ、うるさかったですか?」 お隣さん、うちとこの部屋の間の畑中さんです。延長コード件ではお世話になっております。 「おう、畑中じゃないか」 「え?・・・水谷さん?」 私をよけるようにして見ています。 「あのー?」 「ンン!嫌、さほどうるさくはないが、隣にいるのに、いつもうまい匂いばかりかがされているのが…」 「あー、すみません、きずかなくて、お食事まだですか、よければいかがですか?」 来いよという声に誘われ、お客様です。 彼も部屋の中をへーという風に見ています。 どうぞどうぞと進められて座る人。  今日は蒲池さんと石田さんは遅くなると連絡はいただいているので二人分は取ってあります。 ビールを継いでもらっています。 「どうぞ、すみません、遅くなりまして」 水谷さんに女性に囲まれてどうしたんですかと聞いている。 彼は今までの経緯を話している。 他にも男性が二人、今年の新人だがここで飯をいただいているという。 彼は二十六歳、私たちの配属されていない営業所に行っている。 「そうか、みんな高卒、だから早いんだ、朝も結構早いよな」 みんなですみませんと謝ったけど、さほど気にならないという、ただ窓が開いていると楽しそうな声が聞こえてくるから、毎日何をしているのだろうと思ってはいたそうだ。 そして、みんなが食べ終わり動き始めたころ。 「あのさ、昨日、善財炊いてたんか?」 畑中さんは奈良県の出身だそうだ。 「いいえ、あ、そうだ、こういうのを作っていたんです」 余って小皿に入ったものを出した。 「きしめん?」 こっちにはきなこをまぶして食べるんです。 きしめんにきなこ? 「騙されたと思って食べてみたら、高級和菓子だ」 ふーん。 「食べてみます?」 いや、今日はいい、腹いっぱいだという。 まあ完食してるしご飯も食べてたしな。 ごちそうさまと出ていく男性二人、また来てくださいねなんて一応社交辞令で送り出した。 「どうする?こっちも言わないとダメじゃん」 「こっちだけってやばいよね」 「でも斉藤さんだっけ?いるの?」 あんまり見ないよね? でも電気。 まあそうだよねーなんて、でもあれだいぶ勇気いるよね。 なんで呼ばないんだって言ってきてるようなものだもんね。 ピンポーンとなりドアが開いた。 「ただいまー」 「おなかすいたよー」 二人が帰ってきました。女子たちもそれぞれ部屋に戻っていきました。 一応二人にも聞いたけど、一番の年長者ということで水谷さんに聞いた方がいいんじゃないかということになり、明日にでも聞いてみるか。 ブー、ブー。ン?斉藤課長からメール? 今電話いいかときたもんだ、二人はベッドの上で、好きな時間、外に出た、蒸し暑い都会の空気、電話を待っていると課長が奥さんとかわるというのだ、何事? 今日食べた、ハットの作り方を聞きたいというのだ。 あんこは缶詰でもいい? 一度火にかけて少し水分を飛ばしてください、あったまるくらいでなんて御享受したんだ。懐かしくて旦那さんだけが食べてずるいと、子供たちも好きだったんですと言われた、緑のきなこ、どこで手に入るかしら?無理だろうな、うちは送ってきてもらったのがあるけど。よければ明日にでも課長にお渡ししましょうか?あらいいの?かまいません、黄色いのもあるので。じゃあ遠慮なしにいただこうかしらという、安いものだしな。 それでは、おやすみなさい。 東北の人にはなじみのある緑のきなこ、こっちの人は珍しいしいというか売ってないんだよね、びっくりした。 次の日の朝。 「はいどうぞ」 「いただきます」 「水谷さん、お隣の斉藤さんなんですけどね」 食べながら聞いてもらった。 「実家が近いからな」 「近いのに寮なんですか?」 「斉藤課長は、今年戻って来たからな」 ン?今なんと。 「斉藤課長、宮城から戻ってきた」 「それ、私の営業所?」 おーそうだなと案外簡単に、息子が親とおんなじ会社? 一級建築士を目指していて、私たちのとは違い本社の設計の方にいるんだって。それって、えー、でしょ! おはようと入ってくる人達の熱気で熱いです。 課長に渡したら、そうかなんて軽くて。この年になったら転勤ばかりで、つらくて奥さんを連れて行ってばかりだという、東北ばかり回っていたからなという。それでか。 お子さんは三人、皆独立してはいるが側に皆さんおられるらしい。 そして事件は二日後に起きた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加