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prologue -キャスティング-
[Mew]
熱烈なファンも多いタイの人気BL小説"TT"が実写ドラマ化されることとなり
今日はキャスティングオーディションの日ーー
初めて彼を見たとき、こんなに綺麗な男がいるのかと衝撃を受けた。
芸能界にいて、綺麗な人は見慣れている俺でもそう思った。
ーーーーーー
「次、ターン役候補のMew(ミュー)君と、タイプ役候補のGulf (ガルフ)君でやってみて」
はい。
と少し高めの凛とした、綺麗な声で聞こえた返事。
「よろしくお願いします。P 'Mew」
(タイでは先輩にP '、後輩にN 'とつける)
近くで俺を見上げた少し強張った表情。
きっと凄く緊張している。
「よろしく、N ' Gulf 」
少しでも助けになればと優しく笑いかけた。
ふっと小さく息を吐き、一度目を閉じた彼…
伏せられた長い睫毛がスローモーションの様に動きもう一度俺の目を見たときには既にそこに Gulf は居なかった。
「 」
自分の口から驚くほどスムーズに言葉が落ちる。
感情が、乗る。
スタジオは異様な静寂に包まれていた。もちろんオーディションの場は常に特有の緊張感に包まれるもの。
でもその時の空気は皆が固唾を飲んで2人の演技に引き込まれてる…。
そんな感じだった。
俺は、
…こいつが欲しい!!
その感情をそのままぶつけるように熱く見つめ、頬に手を当てた。
ふわりと香るシャンプーの匂い
引き寄せられたGulf の耳は真っ赤で、
それでも睨み返すその目は、タイプの役のもつ意志の強さを宿していた。
俺はそれがとても愛おしいと思った。
ーーーーーーーー
「Mew。ターン役はあなたで決まりよ。相手役だけど… 「N 'Gulf でお願いします。」
…そう言うと思ってたわ!あなたがもし違う子を指名したら考えようと思ってたけど、満場一致であの子で決まりね。あの子まだキャリアも浅いし、芸能界も不慣れなところもあると思うから、いろいろ気にかけてあげてね」
もちろん
そのつもりだ
ぐるりと見回して目を止めた先には、ひとり今日の台本か何かを読みながら座っている彼。
俺は唇がやけに乾いた気がして、彼を見たままそれをなぞって湿らせた。
それが彼、 Gulf との出会いだった。
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