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「あいつ、バリキャリすぎて旦那とそりが合わなくなって、離婚したんだろ?」
「まあ、社内結婚だったしな。仕事ができすぎる嫁が嫌になったんだろ」
「葉月、結婚してたのか?」
思わず口を挟むと、3人がすごく深いため息をついた。なんだよその反応、知らなかった俺が悪いみたいじゃないか。
「おまえは、昔からそうだよな。彼女がそんなに途切れない割に、相手に興味がないっていうか」
「そうそう。俺、当時の侑一の彼女から何度か相談されたわ。懐かしい」
「大学時代、一番続いたのが葉月だろ?2年くらい付き合ってたじゃねえか」
「ああ……そうだったかもしれないな」
葉月は俺と対照的で、さばさばとした活発な女の子だった。だからこそ、お互いにないものに惹かれて付き合ったのだと、あの当時は思っていた。
卒業や就職と同時にほとんど自然消滅してしまったから、交際期間については気にしていなかったけれど──そうか、そんなに付き合っていたのか。
──同じ2年でも、随分と違うものだな。
ふいにそんな思いが頭をよぎり、世界で一番大切な彼女の顔が浮かぶ。
紗友里と過ごしてきたこの2年間は、あっという間だったけれどかけがえのないものだ。彼女といる時間は俺にとって必要不可欠で、愛おしくて、宝物みたいに輝いている。
「侑一、おまえさ……そんなにわかりやすいやつだったか?」
「え?」
「あの可愛い彼女のこと考えてるだろ。ニヤニヤすんなって」
元カノの話なんか出して悪かったな。所帯じみてる俺たちに、もっとノロケ話聞かせてくれよ。遼太がそう言って、俺の肩をバシバシ叩く。
そういえば、葉月の話をしてたんだな。今さらそれを思い出し、俺は本当に紗友里以外の女に興味がないんだな──そう実感して、可笑しくなってしまった。
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