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「おい、葉月まで」
「だって、いつも“俺はどっちでもいいよ”って言ってたじゃない。いまだから言うけど、わたし、結構イライラしてたんだよ」
言葉とは裏腹に薄く笑みを浮かべながら言うと、「じゃあ、わたしは香奈子のほうに行くね。またあとで話そ」と空のグラスを持って俺たちから離れていった。
「おまえら、人の個人情報をペラペラと……」
「牽制だよ。おまえ、変に優しいところあるから、付け込まれないようにって」
遼太が妙に真面目な顔をして、「ほら、新しいビール」とキンキンに冷えたジョッキを差し出してくる。
「いや、それはさすがにないだろ。付き合ってたの、何年前だと思ってるんだよ」
それに、いまもこれからも、俺は紗友里にしか興味ないし──。心の中で呟きながらジョッキを受け取って、一気に喉に流し込んだ。
「葉月の元旦那、おまえとは正反対のタイプだったみたいだぞ。強引で、俺様みたいな」
「それがなにか?」
「離婚したてのタイミングで元カレの優男に会って、変な気持ちを持たれたら困るって思ったんだよ」
な?と遼太が同意を求めると、大樹と翔平が大きく頷く。
「おまえがあんなにわかりやすく浮かれてるのは、初めて見たからな。よっぽどあの子に惚れてるんだろ」
「俺たちはな、おまえに、あの可愛い彼女と幸せになってほしいわけ」
盛大に祝ってやるから、結婚式、絶対に呼べよ。大樹が念押しするように言って、歯を見せて二カッと笑った。
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