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「さゆちゃん、もう行けそうなら一緒に行かない?お店、18時に予約してあるから」
「亜紀ちゃん、お疲れ。今日は仕事、大丈夫なの?」
「いいの。来週のわたしが死ぬほど頑張ればいいから」
ぐったりしたようすで亜紀ちゃんが頭を抱えた。明るいピンクブラウンのボブヘアがさらりと揺れる。
「お、もしかしてこれから向かうの?俺も一緒にいい?」
「椎名くん、お疲れ」
紺のポロシャツにグレーのチノパン姿の椎名さんが、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。亜紀ちゃんが軽快に片手を挙げると、「今日は亜紀ちゃんの鬱憤をみんなで晴らす会なんでしょ?」と椎名さんが笑う。
「もう、意地悪言わないで。普通の同期会だってば」
「紗友里ちゃんも、もう行けるの?国保、いまの時期は忙しくないんだっけ」
「はい。税務もやっと落ち着いたところですよね」
「そうそう。春先はきつかったけどね」
「ちょっと、ふたりだけでのほほんと会話しないでよ。幹事はわたしでしょ!」
亜紀ちゃんの大声が、国民健康保険課内に響き渡る。
新人さん、元気だなあ。酒井さんたちの声が耳に入って、わたしは慌てて亜紀ちゃんの腕を引っ張った。
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