#2 同窓会(Side 侑一)

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#2 同窓会(Side 侑一)

侑一(ゆういち)、おまえは本当に変わらないな。老けてもないし太ってもいない」 「そんなことないよ。なんだかんだ毎日飲んじゃうから、腹回りがやばいなって」 「それ、俺の前で言うか?」 「大樹(だいき)、さらに太ったんじゃねえか?食って飲んで、子どもと一緒に昼寝ばっかりしてんだろ」  まだまだ暑い土曜日の午後5時、バーのテラス席に大きな笑い声が響き渡る。  同窓会自体は7時からだが、大学時代、特に仲の良かった4人でゼロ次会をしようということになり──言い出したのは、すでに二児の父になっている大樹だ。前に会ったときよりさらに丸くなっている──、現在に至る。 「いやー、ふたりとも男だから大変だよ。嫁と一緒になって怒ってばかりいる」 「えらいな、ちゃんと結婚して子どもまで育てて」  俺ら、もう30だもんな。自由気ままな独身生活を謳歌している翔平(しょうへい)が、ため息をついてビールジョッキの淵をなぞる。 「そういえば、侑一は彼女いねえの?おまえ、昔からわりとモテるだろ」  眼鏡の向こうの大きな目が鋭く光る。俺たちの中で一番の遊び人だった遼太(りょうた)は、大学を出てすぐ、合コンで出会った彼女とわずか3ヶ月の交際期間を経て結婚した。いまではなんと、小学生の娘がいる。 「ああ、うん。……近いうちに、結婚しようと思ってて」  旧友にこういう報告をするのって、気恥ずかしいな──。頭を掻きながら小声で言うと、3人の「ええ?!」という声が、大勢の人が行き交うすすきの(・・・・)交差点に響いた。
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