ムーンライトの恋

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 その時まだ十九だったから、レストランではどう振る舞っていいかわからなくて、カチコチに緊張したわね。テーブルマナーは学生の頃に習っていたけれど、普通の家庭ではそうそう洋食を食べに行く機会なんてないじゃない? ぎこちなくフォークとナイフを動かして、そんなアタシを彰治郎さんは優しい笑顔で眺めてらしたわ。  やっと食事が終わってホッとしていたら、彰治郎さんが「僕は今日ここに泊まるんだ。スイートルームを取ってあるけど、見に来るかい?」って尋ねるから、アタシ二つ返事で「見たいわ」って言ったの。好奇心旺盛だったのね。  そしてその日アタシは彰治郎さんに抱かれました。そんなことになるなんて思いもしなくてホントにビックリしたけれど、不思議とイヤじゃなかったのよね。決して強引じゃなかったし、その気にさせるのが上手かったのかもしれないわね。もちろん初めてでしたよ。でも、よくわからないままに終わったっていうか。事の重大さもわかってなくて、こんなものなのねって思ってた。  その時彰治郎さんに、「僕の愛人にならないか?」って言われて、愛人ってお金をもらったりする関係でしょう? でもアタシ、そんなに悪くない育ちだったし、自分もお仕事があってお金には困っていなかったから、そう言ったの。でも、僕は君が好きだからたまにこうして会って欲しいって言われて、アタシちょっと浮かれてたのね、「わかりました」って言っちゃった。  
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