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結局アタシはその後デパートの仕事を辞めたわ。彰治郎さんとの関係が続くうちに、奥様と顔を合わせるのが辛くなってしまって。
彰治郎さんは会う度お小遣いをくれたから、最初はお菓子の缶にぜんぶ貯めていたんだけど、仕事を辞めてからは彰治郎さんに養ってもらってた。
週に一度くらい会って、洋服やアクセサリーやなんかを買ってもらって、食事をして、ホテルに行って、お金をもらって。劇場に映画を観に行ったり、歌舞伎を観たりもしたわ。
たまにはコッソリ出張に同行させてくれたこともあって、楽しかった。幸せだったわ。アタシいつの間にか、彰治郎さんを本気で好きになってしまっていたのね。
彰治郎さんはいつも優しくて、アタシがワガママ言っても何でも聞いてくれたし、怒ったことなんて一度もなくて、ホントに大事にしてくれた。
彰治郎さんには奥様があって、アタシは愛人でしかなかったけれど、それでもアタシ達、心から愛し合っていたの。
奥様と別れてアタシと一緒になって、って、何度言おうと思ったかわからない。でも言ってしまえば、彰治郎さんとの時間が終わってしまう気がして、言えなかった。一日でも長く側に居るには、家庭のことには触れずにいるしかなかった。
そんな期間が、そうね、五、六年続いたわ。
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