マイマイ

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 ぬるー。  ぬるー。  うん。  これが精一杯の速度なのだよ、諸君。  何を隠そう、私はカタツムリなのだ!  って、いやいやいや!  待って、待って!  意識は女子高生だからね!  このままカタツムリで一生とか、絶対ヤダから!  誰かーー!!  神様いるなら今すぐカモーーン!!  夢なら、早く覚まして下さい。  土下座でも何でもするんで。  いや、ほんと。  何なんですか、コレ。  今日さ。  部活中に嫌なコトあってね。  殻に閉じ籠りたいなぁ、なんて、思ったりして。  でも、まさか。  ホントに殻を、背負っちゃうとか思わないじゃん!  ってか、カタツムリってさ。  殻に閉じ籠ってないからね。  めっちゃ、はみ出てるじゃーーん!   それにさ。  言葉のあやってゆーか。  本気じゃなかったんだって。    しとしと。しとしと。  やまない雨が降り続いてる。  まるで、私のかわりに涙を流してくれてるみたい。  もとに、戻れたらさ。  ちゃんと向き合うから。  まだ、伝えたいこと、伝えられてないから…。  頼むよ、神様。  私、コンクリート食べてる場合じゃないのよ。  カタツムリって苔(こけ)も食べるんだなぁとか。  そんな知識増えても、何の役にも立たないよ!  神社の階段をぬるー。っと進む私の横を。  スゴイ勢いで駆けてくる、人間の大きな足。  ギャーー!  ちょっと!当たったらどーすんの?  俊敏に避けるとか出来ないんだから!  気を付けてよ!  ぬるー。  息を切らせて階段を上がる後ろ姿に、ハッとする。  ……トウマだ。  傘もささずに、何やってんのよ。  そんな一心不乱になって、どこ行くの。  あぁ。そうか。  ここは、幼い頃、一緒によく来た神社なのか……。 「なぁ、サキ。何お願いしたんだよ?」 「内緒!だって言ったら叶わないんだよ?」 「そんなの関係ねーよ。」 「じゃあ、トウマは何お願いしたの?」 「……。別に。」 「あはは!トウマも気にしてるじゃん!」 「俺は願掛けだから、言えねーだけだ!」 「ふーん。じゃあ、私も願掛けだから言わない。」 「じゃあって何だよ。ぜってー違ぇじゃん。」 「ほらほら。いいから、おみくじ引いて帰ろう!」  私の願いはいつも同じだったよ。 『ずっと、トウマと一緒に居られますように──』  子どもの頃は、簡単に手を繋げた。  全身で、トウマが好きだって伝えられた。  いつも一緒だった。  いつからだろう。  素直になれなくなったのは。
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