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「ん………。」
「サキ!大丈夫か?サキ!」
ゆっくり瞼を上げると、トウマが私の肩を揺すってた。
必死に呼び掛けるトウマの目に……私、映ってる。
「……トウマ?」
「サキ!」
「──声が、出る。」
「は?お前何言って……うわ!」
私はわき上がる感情のままに、トウマに抱きついた。
「うっ…ふっ……うわぁぁぁっ」
戸惑った様子を見せていたけれど、そっと優しく抱き締めてくれたトウマの温もりを全身に感じて…涙があとからあとから、溢れ出した。
「トウマ……好きなの…私、トウマのこと………ずっと、ずっと好きだったの……」
「えっ?」
「後輩の子と…話てるの見て……嫉妬して、心にも無いこと言っちゃて…」
「うん…」
「私…カタツムリになって………」
「──うん?」
「素直に言えなかったこと、スゴく後悔したの…だから、私……」
「ちょ、ちょっと落ち着け。サキ。」
「……ん?」
「カタツムリ?」
「うん。」
「サキが?」
「そう。カタツムリになってて、トウマに気付いてもらえなくて…スゴく悲しかった。」
「………。」
トウマが目をパチクリと瞬かせたまま、絶句した。
あー……。
カタツムリとか、意味分かんないよね…。
「いや、あの…変なこと言っちゃってごめん。」
「あ、あぁ。でも……その、本当なのか?俺のこと…」
期待と不安で揺れ動く瞳と目が合う。
あぁ、見つめ合えるって…幸せだな…。
私はトウマを見ながらふわりと微笑んだ。
「私はトウマのことが好き。それは、本当。」
視界が急に暗闇に包まれて。
私は、トウマの温かい腕に思いっきり抱き締められていた。
「………俺も。サキが好きだ。幼馴染みの期間が長すぎて、なかなか言い出せなかった。サキ……伝えてくれてありがとうな。」
「……っ。」
どうしよう。
神様!
私、嬉しすぎて…。
心の奥から幸せな気持ちがこみ上げてきて。
じわり。
目頭が熱くなってくる。
「サキ…」
甘くて優しい声が、耳もとで私の名前を呼んだ。
胸がキュンと締め付けられて、トウマの背中に回した手に自然と力が入る。
いつの間にか、雨は止んで、爽やかな光が境内に射し込み、私達を優しく包み込んでいた──。
あれは、何だったのかな。
夢?幻?それとも、神様のイタズラ?
…何でもいっか。
大切なものに気が付けたから。
ありがとう。神様。
これからは、素直に気持ちを伝えていくから。
だから、心配しないでね。
優しく私の手を引いてくれる大好きなトウマに
私はニッコリと微笑んで、心からの想いを伝えた。
「トウマ、大好き!」
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