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どこか嬉しそうな彼女に、彼は口角を上げた。
「なあ、お前。どうして王子様と結婚しなかったんだ」
「?く。くだらない。私は降りる、え?」
シリウスは彼女をもっと近づけてきた。
「何よ!下ろして」
「あんなに良い男がたくさんいたのに……お前は何をしてるんだ」
ニコは涙目でジタバタしてきた。
「もう!あんたなんか嫌いよ!今頃やってきて」
「俺は好きだけど」
「嘘よ!離して」
すると彼はニコにおでこを優しく当てた。
「……あのな。俺は今はこんな巨人だけどよ」
「見ればわかるわよ」
「もうすぐお前と同じサイズに戻れるから」
「へ?」
彼はそういうとニコをそっと肩に乗せた。彼女は立ったまま彼の髪を掴んだ。
「どういう意味?」
「話は以上だ。まずは飯だ」
「何が以上よ。全然説明になってないし」
「ニコ……」
彼は甘くささやき、そっと横を向いた。彼の目には小さい顔があった。目を赤くした彼女はじっと彼を見ていた。
「愛してるよ」
「……」
彼女は黙って彼の鼻に抱きついた。そして大きな唇に小さなキスをした。
緑深い森の中の王国の二人の恋の旅は爽やかな風が吹いているのだった。
Fin
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