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「おいおい。旅は終わってないぞ。俺を国に返してくれ」
「……そうだな」
旅を終わらせたいシリウスの声に、ニコは寂しい顔をしたが、これはすぐに変わった。
「静かに」
「なんだ」
「……お前には聞こえないのか?これは」
シャーーーーという低周波は、二人に迫っていた。
「おい、ニコ」
「シリウス。起きろ……後方……ゆっくり。振り向いてくれ」
彼が向いた火の向こう。蛇が舌を出していた。蛇と同等のニコは剣を構えていた。
「ニコ」
「し!我は緑の国の戦士、ニコ……そなたに何もせぬ」
蛇はシャーーーと威嚇していた。しかし彼女は睨んだままだった。
「いい子だ……。そう、大人しく」
ニコはゆっくりと横に移動した。その時、シリウスが動いたので、驚いた蛇がニコに首を伸ばしてきた。これをニコは剣でざば!と斬った。逆手での早技にシリウスは目を見開いていた。
「おお」
「まだだ!後ろ!」
シリウスの足に登ってきた他の蛇を、ニコはバサバサと斬っていた。返り血を浴びた彼女は、火の向こうに黒い影を見つけた。
「前だ!蝙蝠!」
「う。前が見えない!」
吸血蝙蝠は彼の傷の匂いを嗅ぎつけて集まってきていた。これに囲まれてしまったシリウスは全身を覆われていた。これを見たニコは彼に叫んだ。
「シリウス!耳を塞げ!行くぞ」
「……ああ」
彼女は大きく息を吸った。そして声を放った。
…………
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