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国を出たことのない王子は、今回の旅の話を聞きたがっていた。面倒だったニコはマイルに相手を任せて挨拶だけをしていた。
煌びやかな席に、美しい男子が集う会の女客はニコとマイルと三姉妹だけだった。この異様な雰囲気が息苦しいニコは、ベランダに出た。月が出ていた。
……今ごろ、何をしているんだろう。
どんな美辞麗句も耳に入らないニコは、だた彼だけを思っていた。
翌朝。ニコは鳥を呼び、彼を探した。彼らの家は大きいので空からすぐに発見できた。
その中の一つに見覚えのある洗濯物が干してあったので、ニコは訪れてみた。
「ドアが大きい?あの、こんにちは。誰もいないんですか」
大きなブーツは見覚えあるものだった。ニコはそっと家に入った。彼はいなかった。
「なんだ、留守……あれ?」
外に出ると彼が帰ってきたところだった。彼女はおーいと声を掛けると彼はびっくりした顔をした。
「お前か、お城はどうした」
「つまんないんだもの。ねえ、ここがシリウスの家?」
「ああ」
しかし。旅をしていた時と異なり、彼は冷たかった。
「どうしたの」
「……旅は終わったんだ。ここには来るな」
「え」
そういってシリウスは背を向けて椅子に座ってしまった。ニコは彼の足にすがっていた。
「どうしたの?私が何かいけない事をしたの」
「勘違いするな。俺はお前を守る仕事をしていたんだ。個人的な気持ちはない」
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