プロローグ

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プロローグ

「さあ、おいで?ゆっくりこっちに」 しかしドラゴンは口から血を滴らせていた。これを見た部下のマイルは下がれと叫んだ。 「ニコ様!あれはもう無理です。血の味を覚えています」 「致し方ない」 上空を緑色の鳥に乗っていたニコは静かに地上に舞い降りた。腰の剣をさっと取り出し構えた。 折から逃げ出し狂ったドラゴンは、町中で暴れた挙句、店を破壊し、今は路地の隅にて息を整えていた。 剣を構えたニコはじりじりと歩み寄っていた。 よだれと血に塗れ、真っ赤な目のドラゴンをニコはもう楽にしてやりたかった。 暴れるドラゴンを民のためにも、この場でなんとしても仕留めたかった。 その時。ドラゴンは思いもよらぬ力でそばの家の屋根に登り始めた。グラグラと日干し煉瓦造が崩れ、見物人から悲鳴が上がる中、ニコは隙を見逃さなかった。 背を向けたられたニコは、その背をよじ登って行った。ドラゴンは声を上げたが、ニコは首までするすると登ってきた。 その時狂ったドラゴンは背にいるニコに火を吐いた。しかし焼けたのは自身の背であり、ニコは喉の下、反対側まで回り込み炎から逃れていた。 ドラゴンが頭を振る中、落とされぬように(たてがみ)をつかんでいたニコは、ドラゴンの動きが止まった瞬間。顔まで登ってきた。 「お別れだ……済まない」 そう言うとニコはドラゴンの急所である目の横の皮膚の薄い箇所に剣を突き刺した。ドラゴンはそのまま動きを止めた。ニコは剣を引き抜いた。 「危ない!倒れるぞ」 力ないドラゴンはまっすぐ地上に落ちて行った。ニコはドラゴンの背に掴み付き、これを下敷きにするように地上に降りてきた。
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