1、プロローグ

1/1
前へ
/1ページ
次へ

1、プロローグ

1話、プロローグ 「もう朝か…」 起床は快調だ、だが今は いつもと何かが違う。 明らかにオレの体温とは違う生暖かさが… モゾっ… モゾっ…? なんだモゾって? モゾっ… また布団が動いた、ん…? 白くて細い陶器みてぇな手が…? 「さてはオマエ、ルーポだな!?」 オレはある人物を確信して掛け布団を剥いだ。 「ふわぁ… なんなのだ、やかましい」 「クレー!?」 「なっ、黒チワワ!? なぜワタシのベッドにいる!?」 どうやらオレの思い違いだったらしい。 この幼女の名はクレー、どう思ったのかキャンキャンうるさいことからオレのことを黒チワワと呼ぶ失礼なガキだ。 金髪に緑の猫目…、そしてベビードールとかいう下着姿……。 「うむ…ワタシとしたことが、ねぼけていたようだ」 なにを呑気にアクビをしてんだか… つか、これを誰かに見られたらマズい! これじゃあまるでオレがクレーを襲っちまったみたいじゃねぇか!! 「ちょっと!ちょっと!クレーに何やってるの!?」 はっ…! ヤベェ…、早速誰かに気づかれた!? オレは恐る恐るその声の先を見た。 「こ、これは違っ!………って、テメェこそ何やってんだ!?」 待て待て!朝っぱらから情報量が多すぎる! ガタイがそこそこ良い優男が女装をしてやがる!! しかも厚化粧にフリフリのドレスを身にまとって…。 しかもソイツは すぐさまオレに近づくとオレの肩を揺らした。 「ねぇねぇ、どういう事なのぉ!?」 「それはこっちが聞きてぇ! 朝っぱらから女装してるやつの言うことか!?」 「これはただの女装じゃないよぉ! マリー・アントワネットの優雅な装いだよぉ!」 「何が優雅な装いだ!キメェ!! 近寄るな!!」 この女装してるアルビノの優男の名はジェスターだ。 ここにいる下着幼女、クレーのイトコだが…にしても年の差ありすぎるだろ? まぁいい…。 「お取り込み中、失礼します」 「今度はなんだ!?」 次はアルビノの少年が入ってきた。 「兄上、クレー。今日は来客が訪れるそうですよ、身支度をしなくては…」 「「来客!?」」 少年はジェスターとクレーを まるで犬を手懐けるようにパンパンと手を叩いた。 「えぇ!お客さん!? なーんでそれを言ってくれなかったのぉ?! はやく普段通りに着替えなくっちゃぁ!」 「うむ 客人か…、まったくメンドウだな……。ワタシは もう一眠りさせてもらうか」 少年の声に反応してジェスターとクレーはオレの部屋を去った。 「大丈夫ですか、ヴォルフ?」 「ああ、助かったぜ ルーポ……」 2人を手懐けた少年の名はルーポ。 この一見 真面目そうなガキ、コイツこそオレの天敵だがのちにボロが出るだろうから、今は置いておこう。 ……さて、どこから話して行こうか? まずオレのことから話すか。 オレの名はヴォルフ。 と言っても国籍は日本、しかも極道の若頭だ。 今は訳あってコイツらの屋敷の居候として日々を暮らしているわけだが…… そう…その朝っぱらから うるさいのが、オレの日常だ。 考えてもみろよ、朝からベッドに潜り込む下着幼女だの女装した男だのって! ったく、なんちゅう日常だよ!! ……少し外の空気でも吸いに行こう。 「スーーッ……、ハーーッ……」 今、オレは屋敷の庭で深呼吸をしてる。 ったく、朝からハードだぜ。 「ヴォルフさん、どうかなさいましたか? 顔色が悪いですよ?」 「!!」 ア、アーデルハイト!? 待て待て! なんで庭にアーデルハイトがいやがるんだ!? ヤバい、心臓がバクバクしやがる!! 「……オマエこそ、朝っぱらから庭で何してんだ?」 「お花にお水をあげています!」 コイツの名はアーデルハイト、この屋敷のメイドだ。 桜色の髪とまぁ見た目は派手だが性格は素朴で裏表がない。 惚れない男はまず いないだろうな。 かくいうオレも、今日も癒される…のは事実だ……。 「そうだ!ヴォルフさんも一緒に お水をあげましょう!」 「い、一緒!?」 「はい!だってヴォルフさんの血色が悪いのは、メイドとして放っておけません! お花の お世話をしたら気分も晴れやかになりますよ♪」 や、優しい……。 今、心臓がドキッと脈打つ感覚を覚えた。 だが、ああっ!クソっ!調子が狂う!! なんでそうオレに構うんだッ!! 「アーデルハイト」 「はい、ルーポ様!」 「そろそろ朝食の時間ですね、今日のブレック・ファーストティーは?」 「はい!ただ今 用意致します♪」 アーデルハイトはスカートの裾を摘んでオレに一礼をして去って行った。 ルーポめ…寝起きのときは良いとして、また邪魔しやがる……。 「ヴォルフ、あまりアーデルハイトばかり見ないでくださいよ…。傷つきます」 ルーポは悲しげにそう言った。 そして…… 「んっ…」 オレの唇にソッと唇を重ねた。 「君は僕のモノなんですから……」 ルーポは何事かもなかったように優しく微笑んだ。 「クスッ…赤くなって可愛らしいですね、まるで熟れたチェリーのよう……」 そう耳打ちをした。 クソッ…、誰がチェリーだっ!! このクソガキには耐久ついてたのに この有様かよ! オレは恐らく頬を赤らめている。 ったく! 慣れてねぇんだよ こういうのは…… オレは仮にでも極道者、しかも若頭だぞ!? このまま舐められっぱなしじゃいられねぇ!! 察しの通りだが、オレとコイツはいつの間にか お忍びで付き合っている。 正しくは ある夜を境に そういう風にされたがな。 アイツがオレのどこに惚れたのかはまだわからねぇ、それにオレが好きなヤツはアーデルハイトただ1人だ。 「いい加減、あのメイドに目移りでもしたら 君の綺麗な眼をくり抜いてしまうかもしれません…。そして、手を出したりでもしたら……アーデルハイトを その場で殺めますよ?」 だがアイツは間違いなく思考がイカれている。 オレが万が一 抵抗したらアーデルハイトの命はないと思われる。 しばらく こんな日常が続くとなると億劫だぜ。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加