ベリーベリーブラックベリー

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 10月の沖縄旅行が近づいた。旅行は週末をはずし、週明けのウィークデイに実施される。値段も安い、仕事への影響も少ない日程が選択されたのだろう。  原田は熱中症で入院を経験した後、真理恵の手製のお弁当は変わらず食べ、しかし自転車通勤はやめた。  食生活といえば、ラーメン屋に行くことを、禁じるのもやめた。  ただ、前のようにドカ食いはしなくなったし、ラーメンも週に一度行けば満足するようになった。食後のデザートはなぜかあまりほしくなくなり、口さみしいときはガムを噛んでいる。 「いよいよ明日ね。原田くん」真理恵はそういって、お弁当を差し出した。 「そうですね。台風も来ていないみたいだし。無事に旅行にいけそうですね」  なんとなく声に哀愁が漂う。いっそ台風でも来て中止になればいいのにと密に願っていた原田であった。 「……ダイエットの方は? 成功したのかしら」 「まあ、細々と続いているかんじですかね。体重は横ばいというか。こんなもんですよ。しょせん。そ、それで、吉村さんは沖縄での自由行動の楽しみは水族館ですか? ぼくは、ソーキそばを食べようかと……」  原田はなんとなく目をそらした。  お弁当箱の蓋をあけるといるかの形にきられた海苔が白米の上にあった。  まるであざけっているのか、それとも挑発しているのか、原田は困惑した。さんさんと日差しが降り注ぐビーチが目に浮かぶ。  そこにお前は、いるのかいないのか。  そんな原田を見ていた真理恵は 「実はわたしは、観光ではなくて、」と、真剣な顔で悪事を告白するような顔で言った
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