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「この機会だから、自然保護の団体の人ちと会うつもりなの。社内旅行恒例の夜の宴会もパスして、そっちの人たちとのオフ会というか……呑みながら沖縄のこれからを熱く語り合う会ね」
暑く、熱く、語り合う……ベリーベリーナイスではないか? 真理恵にとっては。
いや、自分にとっては、まるで撃ち抜かれたような事実だったけど。
「はあ、そうだったんですか。ますます活動的でアグレッシブですなあ」
原田は、首に巻いていたタオルで汗を拭きながら、なんのための自分のダイエットだったのか、と虚しく思い始めた。
プールサイドでのブッフェ形式の宴会にも真理恵がいないとは。
せっかく、タンクトップの真理恵や、髪をあげてブーゲンビリアを飾った真理恵や、腰にまいた色っぽいパレオ姿とかを夢見ていたのに、なんてことだ。
せめて、せめて見るだけでも、ああ。それさえも許されないのか。
なんのために、なんのために。あんなに。ビート軍曹、わたしは戦線から離脱いたします。ごめんなさい。
「だからね、原田くんも来ない? そこに」
「は?」
いまだ原田の頭の中には、ブリードオブジャンプの世界の音楽をBGMに、ヘリコプターから垂れ下がる縄梯子につかまり、地上に降下している自分しかいなかった。
敗残兵そのものの自分であった。
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