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「だから、相変わらずサッシ悪いのね。そこに一緒に行ってくれれば、助かるかなぁと考えているの」
「え?」
ヘリコプターから急に縄梯子が引き上げられる。原田はビート軍曹から請われて戦線に復帰するのだ。君しかいない、と聞こえた気がした。
「もちろんご同行いたしまっす」
原田の脳みそに次は豚肉料理や数々のチャンプルーが浮かび始めた。カロリーの高い沖縄料理だ。
「日中は環境保護団体の主催する活動に参加するのよ。少し体を使うけど、初めから同行してもらって……それから基地に反対する人たちとの交流イベントと……」
「へえへえ」
返事をしながら、どんな苦行が待っているのかと不安になる。
話しの内容は半分しか理解できない。まるで翻弄されるように、喜びと不安が交互にやってくるのであった。
「参加費はちゃんと払い込んでいるから」
「は?」
「お弁当代よ」
原田はあっけにとられた。しかし沖縄でずっと真理恵と行動できるのはとてもうれしかった。
真理恵の笑顔も嬉しかった。自分に笑いかけてくれているだけで幸せだった。
しかし環境保護団体の作業がどんなものか、現地で原田が知ったとき、彼は「生きて本土の地を踏むことはないだろう」と確信するのであった。
おわり
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